距離感を教えて
口の中でガリガリと飴玉を噛み砕く。まだ欠片が残っているうちに、幸村のものを口に含んだ。
欠片が当たるのか、時折「うっ…」と短い声を上げる幸村を上目で見るのが真田には楽しい。
(何食わぬ顔で人の期待を裏切ってくれたな)
幸村の成績は悪くはなかったが、総合的には真田の方が勝っていた。
これまで純粋に幸村に恥じない成績を収めようと努めてきただけに、真田にとってこの結果は愉快でもあった。
今度の結果はどう出るか。
わざと赤也を引き合いに出して、部長幸村に俺は足元にも及ばないのだと皆の前で叫んで、成績表をその眼前に見せつけてやろうか。
(俺の成績を間近に見て、幸村はどんな顔をするだろう)
かっとなって言い訳をするだろうか。それとも、澄ました顔で冷たい目を向けるだろうか。
いい気になってそんな想像をしていると、
「真田…楽しい?」
口にくわえたまま目だけで幸村を見上げた。
うっとりとした表情で笑いかけられて、恥ずかしくなる。
「なんだか嬉しそうな顔してるから」
手の甲でそっと頬を撫でられた。
真田は口を休めて、ぼんやりと愛しい相手を見つめた。
あんな飴玉ひとつで験を担ぐなど止めてほしい。
聞くところによれば、蓮二にも勉強を教えてもらっていたというではないか。
「あ、ほら。もう時間がない。はやく…」
こんな時だけはっきりとお願いの意思を示す幸村も、嫌いではないのだが。
