距離感を教えて


教室に着くまでの間に、幸村を見つけて距離を詰めてくる生徒たちがいる。
幸村は相手に合わせてころころと態度を変えた。
八方美人といえばそれまでだが、愛想を振りまいている風はない。聞き上手であり、協調性があるから人が寄ってくるのだと思う。

ここらから先は別々だ。
きっと幸村はまた別の顔をクラスで持っているのだろう。真田の知らない声が、幸村を迎える。
幸村は、教室に入る前にチラッとこちらに視線を寄越すと、控え目に胸の前で手を振って、「また後で」の意味の挨拶をしてくれた。

今週は期末考査期間だ。
一科目のテストが終わる度に、真田は息抜きがてら廊下に出た。佇むのは、決まって幸村のクラスの後方のドアの前である。
各教室から出て来た生徒たちは、休憩の開放感から騒ぎ立てる者も多い。
窓際で腕を組んでいる真田の目の前を走り去る男子もいるし、お喋りに夢中な女子もいる。
そんな騒々しい中にあって、真田は教室の紅一点に目を光らせていた。
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