テニスの王子さま


「Which?」

「…スムース」

「やだ」

俺は得意になって、すでに組み敷いている幸村さんを見下ろした。
賢い幸村さんなら、わかるよね。

「ラフ…」

不服そうな顔してるけど、違うよね。
だってさ、その濡れた瞳…ぜったい準備万端でしょ。

(素直じゃないところがいいよね) 

「ねえ、キスしようよ」

これだけで顔真っ赤。
こっちも可哀想なくらい反応させてさ。
そんなにこの人を期待させてたんだ。待たせてたんだ、俺…
もうさ、すっっごい好きなんだけど。

唇を離すと、とろんとした眠そうな表情で俺を見た。
唇を舌先でしきりに舐めるのは、キスの続きを求めてるから?

「いいよ、もっとしようよ」

5年分のキスだから、こんなもんじゃ足りないよね。
やがて、深いところで熱くなった幸村さんは積極的に体を開放してくれる。
汗で貼り付いた前髪を手で避ければ、形のいいおでこが見えた。もちろんそこにも唇を当てたよ。
俺のだからね。

「俺、あんたが好き。ぜったい大事にするよ」

正直、自分でもびっくりするくらいアピールした。
無駄な事考えてる余裕は無いから。
思えばこんな人、男も女も放っておくわけがない。
5年の間に関係を持っていても不思議じゃないんだし。
それとは別に俺の記憶に残るのは、波打ち際を裸足で走り抜けて行った幸村さんの笑顔。

(アイツとはもう別れたの?)

(5年の間に何人に言い寄られたの?)

(もしかして誰かと寝たりした?)

(その体のどこを触らせたの…)

ねえ、答えなくていいから教えてよ…
なんだよ俺…こんなの意味わかんない。

駄目じゃん。
テニスみたいに強気でいられない。
子どもの時から生意気だって注意されてた。
いつか痛い目見るぞって何度言われたかわかんない。
生意気が嫌ならなんとかするからさ、俺を選んでよ。反省するからさ。

やさしい手…その手で誰を慰めたの?
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