テニスの王子さま



ーーーなに、泣いてるの?泣きたい時はコートで泣け
ばいいよ

テニスコートで泣き伏すあんたとか、最高に似合うからさ。

日本行きの飛行機に乗った俺は、数日前にかけたばかりの電話を思い返しながら瞼を閉じた。
あんたが手塚部長に負けた同じテニスコートに立ってきたよ。コートを踏むとさ、あの日のあんたの気迫が昨日の事みたいに伝わってきたんだよね。
その気迫、ちゃんと受け止めたから。



「5年待ってて」

そう言ったら、予想外にショックを隠さない幸村さんのこわばった顔が忘れられない。

「なに、そんなの…俺にこんな事しておいて…」

(恨んでいいよ。恨みつらみは俺を忘れさせないから)

「このU-17W杯が終わったら海外に行くつもりなんだよね」

「…手塚を追いかけるつもりかい?」

プロになる。
別に部長の真似をするつもりじゃないけどさ。
強いやつがいっぱいいるなら倒したいじゃん。
でっかくなって帰ってくるからさ、待っててよ。

「それまで俺を忘れられなかったら、俺を好きってことでいいよね」

挑戦するような視線を投げたら、

「5年は長すぎるからどうなるか知らないよ」

一度合わせた視線を外された。

「あっそ」

「ひどい王子様だ」  

「名前も呼んでもらうから」  

「名前も忘れてしまうかも」

よく言うよ。横顔にさみしさを映してるくせに。
行かないでって言わないのが、この人の頑固でやさしいところ。
一か八か、俺は幸村さんを置いてきた。
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