テニスの王子さま


「ごめん。謝るからさ」

こっち向いてよ。
お願いだから。

幸村さんはベッドの上で膝を抱えて、ふくれっ面をしたまま俺を無視するつもり。
いつまで裸のままそうしてるつもり?
肩甲骨のかたちとか、うっすら浮き上がってる背骨とか、二の腕も…俺より全然大人びた身体つきなのに、

(案外子どもっぽいんだこの人)

「っ、しゅん…!」

ほら。
俺はブランケットを背中にかけてあげてから、後ろからぎゅっと抱きしめた。

「風邪ひくッスよ」

「そしたらぼうやのせい」

「まあ、そしたら付きっきりで面倒見るけど」

「俺、怒ってるの。話しかけないでくれるかな」

(めんどくさい人だな)

でもほっとけない。
鼻をすすりながら、膝に顔をうめた幸村さんのうなじにキスをした。
俺がここまで人に興味をもつってすごい事なんだけど。もっと喜んでくれてもいいんじゃないの。

「キスも駄目」

「………」

「髪なでるのも駄目」

「………」

馬鹿馬鹿しくなった俺は、壁に寄りかかって片膝を立てて座ると、幸村さんの背中を見てた。
ブランケットで隠れてたって、一度見たら忘れないからね。きれいな背中してた。肌、傷ひとつなくてさ。

(あ、半ケツ見えた)  

幸村さんがブランケットを上に引っ張るからいけないんだよ。
フフンと、俺は声を殺して笑った。

(笑ってくんないかな)

いつか海辺で見た屈託のない笑顔が欲しい。
俺に向ける笑顔は、心に引っかかるものがあるのを知ってるから。
次に会う時、この人はどんな顔を見せてくれるんだろう。

(あ、こっち見た)

「そんなとこで何してるの」

「話かけるなって言ったのそっちでしょ」

「離れていいとは言ってない」

なんで歪んだ顔すんの。
素直に言えば?傍にいてほしいってさ。
うれしい反応ありがとう。
でもごめん。
恨みの感情ならきっと何年も続くから。だから恨み続けて俺を忘れんな。
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