立海 I LOB YOU
玉川が想像していたあの頃、尻を押し上げていたのは真田の方だった。
そして月日が経った今、その尻を前にしているのも真田である。
「待ち侘びたぞ」
「あっはは!飢えたいい目をしているな」
「お前はどうなんだ」
「ご覧の通り」
「……」
幸村自ら股を開くと、現れた元気なソレをはっきりと見た真田は感涙に堪えない。
長かった。ようやくここまで漕ぎ着けた。
手術に間に合わなかったあの日から海外遠征を経て、幸村は体の健康とテニスの精神を取り戻していた。
「待っていたぞ幸村」
言いながら真田は、久しぶりの幸村のからだを前にして呼吸が荒くなる。
「何を待っていたんだか」
ふふと笑った幸村の手が、真田の臍の下を撫でた。
「何これ!」
手の中に包んだソレの違和感に驚いて、バッと半身を起こした幸村が目を丸くした。
以前よりずっと大きく変化している。
最後に行為に及んだのが病に倒れる前だから、久しぶりすぎて記憶が薄れたかといえばそうではない。
(忘れるわけない。この手が、肌が、君を焦がれてやまなかった)
だからといって、これは幸村の知っているものではない。正直、引いた。
(…無理)
腰も引けたが、もちろん手遅れなのはわかっていた。
「改めて完治おめでとう」
「うン…」
キスの圧がすごい。
これだけで、真田がどれだけ愛情を捨てずに待っていてくれたかわかってしまう。
幸村は懸命に応えた。ずっしりとした真田の体が、以前より一回りも大きくなっているように感じる。
「そろそろよかろう」
「ぅ…」
(指…気持ちぃ…真田の息づかい、が…)
限界なのだ。幸村のゴーサインを律儀に待っている。
(あんなモノ…病気の苦しさに比べたらなんでもないじゃないか)
"あんな"とはあんまりな言い様だが、真田のモノに対する恐怖心を振り払うには仕方ない。
幸村がいいよと言うが早いか、ズンと突き上げられてしまった。
おずおずと来られるより返ってよかった。
少しでも病み上がりを心配するような抱き方をすれば、幸村は真田を足蹴にして拒んだだろう。
真田の心遣いに感謝した。
「どんな具合だ?」
「ぁ…は…俺のなかいっぱいだ」
幸村は薄く笑って片手で下腹を撫でると、なんとか意識を繋いだことに安堵した。
態度には出さないが、真田もようやく人心地がついたはずだ。二人にとって厳しい冬が終わったのだから。
すべてが終わって二人が寝物語に選んだのは、自然と部の事だった。立海テニス部のバトンを次世代に渡さなければいけない。
聞くところによると、青学も氷帝も四天宝寺もそれを済ましている。我が立海は…
「赤也が順当だろう」
「順当だけど適任とはいえないな」
思いがけない返事に真田は、枕元の有明行灯のやわらかい光を受けた横顔を見つめた。
ここは真田家の離れで、二人は隣り合った布団にそれぞれ枕を抱えて腹這いになっていた。幸村が豊かな髪を耳にかければ、首筋に赤い跡を認めて真田は自分がした激しい情事を思い返して赤くなる。
髪を乱して体をのけ反らす幸村に、どんどん攻め立てた。首に噛みつくようなキスをしたら、幸村の体内がぎゅっと締まってたまらなく良かったのを覚えている。
事後の直後も、気怠げに過ごす幸村の色気に当てられそうになるのをぐっと堪える真田も大変だ。
「……赤也にそれを言うのか」
「赤也は俺たちの築いてきた立海を目で見て肌で感じてる。俺たちが築きたかった立海も痛いほどわかってる」
「ならば…」
真田は赤也を部長にしてやりたかった。それが当然のつもりで、厳しく可愛がってきた。
けれど幸村は首を振る。
「これからは俺たち、…俺の未知も必要だと思ってね。そこに赤也がいればきっと立海は負けない」
「しかし…いつの間に特定の奴を指導していたのだ」
幸村がこれと決めた部員に接しているのを見たことがない真田は首をかしげた。
「そんな子はいないよ。俺が指導したら意味がないじゃないか。俺に倣ってもらったら困るんだ」
勝つためにね、と幸村は困った笑顔をつくった。
(そうはいっても…)
真田は、幸村が突如として白羽の矢を立てた後輩のプレッシャーに同情した。
また、未知の可能性に賭ける幸村の潔い気性にも惚れていた。
