立海 I LOB YOU


とうとう真田副部長はおろか、レギュラー陣の誰一人として病室にやって来ないまま、幸村部長はストレッチャーに乗せられて手術室へと連れ出されてしまったーーー

(切原!何があったんだよ!真田副部長…!)

玉川は心で叫び、たった一人で自分にできる事を必死に探した。
部員でありながら縁もゆかりもないといっても言い過ぎではないくらい遠い存在の幸村部長に、自分が今何ができるのか…

「部長!」

いくら気丈に振る舞っていても、やはりこわいのだ。幸村部長の不安に揺れる瞳が玉川の胸を突いた。
玉川は立海ジャージが良く見えるように、ストレッチャーにギリギリまで近寄った。
こうすれば、玉川の薄い印象の顔立ちではなく、大好きな立海テニス部を瞳に焼き付けてから手術に臨めるだろうから。

無情にも、手術室手前までストレッチャーが進んで行きかけた時だ。

「幸村!!」

走り込んで来たのがレギュラー陣だとわかった時、玉川はへなへなと崩折れそうになった。緊張の糸がようやく切れたのだ。
これで部長は大丈夫だと安心した後で、立海は関東大会三連覇を成し遂げたという誇りが玉川の胸にはじめて実感となって熱く押し寄せてきた。
しかし一番に聞こえてくるはずの声がしない。それは幸村部長が真っ先に目に入れたいはずの存在なのに。玉川は先輩たちから離れた所で様子をうかがった。

「幸村…!」

「……真田は?」

部長は労うように頷いてからレギュラー陣を見回した後で、その人の名前を静かに呟いた。

「ここにいるぞ!」

少し遅れて駆け込んできた桑原先輩が手に掲げるものを見て、玉川は息を呑んだ。
桑原先輩は幸村部長の顔の横に、真田副部長のジャージをそっと持っていった。

「幸村部長…俺…」

切原が泣き出しそうに肩を落としていた。
部長は頷いて、そのまま手術室へと連れて行かれた。
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