立海 I LOB YOU
幸村部長と真田副部長の関係性は、ほぼ公然たる事実として部内で認知されていた。
だからといって、二人があからさまな素振りをするわけではないが、玉川も節節にそれを感じていた。
真田副部長がコートに立つ幸村部長を見る目は異様だったし、幸村部長もまた、真田副部長をまるで周囲に自慢するような得意な顔で見据えていた。
他には、さりげない物の受け渡しとか、登下校の最中とか、男同士でも愛情のやりとりというのは、男女のそれと大きく変わらないのだなと、玉川は自分と交際中の彼女を重ねたりした。
たまにふざけるのは幸村部長の方で、玉川も何度か自主練の手を止めるほど、二人の微笑ましいやりとりを見るのが好きだった。
「だめ。ちょっと休憩」
ある日、ロードワークを途中で切り上げた幸村部長に、すかさず真田副部長が寄り添った。
よりによって、ベンチを挟んでストレッチをしていた玉川の目の前でそんなやりとりが始まった。
「お腹が痛くてね。アレの日だからかな」
両膝に手をついて、中腰の姿勢で幸村部長が言った。はたから見ていても、辛そうではあった。
「アレとは?」
部長の腕を持ち上げるようにして、体を支え起こしながら副部長が眉をひそめて聞いた。
すると幸村部長はとんでもない事を平然と言った。
「ブルーデーだよ」
フッと微笑を浮かべて、ユニフォームの袖でこめかみから伝う汗を拭いながら副部長を横目で盗み見ていた。
玉川はまさか!と思ったが、副部長には伝わっていない。むぅ…と黙り込んでしまった。幸村部長がわざとわからない単語を使ってからかっているのがわかっているのだ。
「俺にはっきり言わせるなんて罪な男だな」
「幸村!いい加減に…」
「月のものだよ」
これならわかるかい?と幸村部長はしれっと言った。
玉川も赤面したが、真田副部長も目を見開いて固まった。
それくらい、幸村部長が口に出せば有り得ない事も事実のように受け止められた。
「けど、腰が重いのは本当だ。誰かさんに昨日散々…」
その後、副部長に引きずられるようにして幸村部長がどこに行ったのかは定かではない。
自分の存在感の薄さにも悲しくなった玉川だった。
