立海 I LOB YOU
それより前、玉川はまさか自分が未来の新部長の座に就くなんて少しも思っていない。
けれどこの時の玉川も、やはり萎縮して時を過ごしていたーーー
目の前のベッドに横たわるのは紛れもない幸村部長で、この病室には玉川と二人以外誰もいない。
玉川が病室に着いた時には部長は静かに寝息を立てていた。迷ったあげく、側の椅子に腰掛けたのは玉川の忠誠心からだろう。
「幸村の所へ行ってくれ」
なぜ自分がと反論する隙もなく、いきなり病院の場所をメモした紙を渡したのは、桑原先輩だった。
これまで一度も見舞いになんて行った事もないのだ。薄情なのではない。幸村部長に近づけるのなんてレギュラー陣しか許されないものと他の部員たちは思っている。
歓声が上がる。
同学年の切原の試合が続いていた。
「このままだと手術に間に合わないかも知れねぇ。いや…真田の事だ、必ず間に合わせるとは思うが…」
玉川たち他の部員は手術が予定されている事すら知らされていなかった。
レギュラー陣との隔たりに腹が立ったから、ほんの少し反抗した。
ーーー切原が負けなければ間に合います
「そうだな…赤也を信じてくれてサンキューな」
しかし玉川の病院行き拒否は、桑原先輩のやさしい思い違いによってなくなった。
「俺たちはまだここから離れるわけにはいかねぇ。少しでも先に幸村に付いていてほしい」
桑原先輩の真剣な目を見たら、自分が行かなければいけないという気持ちに駆り立てられた。
