十二月のしきたり

pm:22:45

幸村の両親は、いかに俺が幸村の支えになったかをひとしきり語り、「ありがとう」と頭を下げた。
俺はそれには答えなかった。病の完治をもって俺を役目から解放しようとする両親の心遣いに反感をもったからだ。

「俺はまだまだ幸村…精市君と共に時を重ねるつもりです」

そこでふと、不思議そうに俺を見上げる幸村の母親の腕が、見覚えのあるコートを抱いているのに気付いた。おそらく、深夜の訪問をねだった非常識な息子を連れて帰るつもりでいるのだと知る。

「ともかく、今日のところは俺に一任させて頂けませんか。精市君が眠れるまで自分が責任をもって傍にいます」

大人たちは、顔を見合わせて相談した。
俺は、この時ほど常識や大人の都合が鬱陶しいと思った事がなかった。

「それに…自分もちょうど眠れずにいたところですから!一緒に夜を過ごせたら互いの励みになるはず…」

「どうやら君が精市の一番の特効薬らしいね」

息子によく似た落ち着いた声で、父親が俺の肩をたたいた。俺は期待を隠せないまま父親と視線を絡める。
そして妻の手から息子のコートを取り上げると、俺に差し出した。

「精市を頼んだよ」

俺は両手でしっかりとコートを受け取った。

「君にとっても精市が何かしらの効果に繋がっていれば嬉しいよ」

「効果どころか、妙薬です」

「それはまた…意味深だね」

「あ、その…助けられています」

俺は軽率な発言にあわてた。

「薬もなにも、ほんの小さな時からの友達として、弦一郎君はそう言ってくれているんだから」

幸村の母親が、夫が俺をイジっていると思ったのか庇うように口を挟んだ。

「男子にとって無二の親友がいるといないのではまるで違う人生となるものだよ」

父親の言葉は有り難かったが、そうまで言われるとますます恥ずかしくなってきた。

「こんなこともあろうかと思ってね。でも実際、君の気持ちが精市と同じで良かったよ。断られたら、渡せないところだった。ふたりの親愛と友情にメリークリスマス」

「呼んできます」

ケーキを受け取った俺は、いつまでも顔を出さない幸村をけしからんと思い始めた。

「いいから。どうせその辺で聞き耳を立てているよ。君の一途な友情がくすぐったくて恥ずかしいんだろう」

わざと俺だけに聞こえるように声を潜めて言った父親は、試すように笑った。
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