十二月のしきたり
pm:18:30
「なんだよ…この手」
せめて幸村の抱いた感情が"困惑"ではなくて"当惑"であれば良いと願う。
俺は自分の感情が起こした行動に引っ込みがつかなかった。しかし幸村は重ねた手をそのままに、黙って夜景を見つめるフリをしてくれた。
どう切り出したらいいものかわからなくなって、いたずらに時間が過ぎた。そんな情けない俺に、
「…そろそろ帰らないとだめなんじゃないのか」
幸村は遠回しに、この状況をなんとかしようとしているのか。
ふたつの手は、重なったまま石になってしまったのではないかと思うくらいずっと動かせずにいる。
「早く帰らないと君の家…」
門限に厳しいのは承知の上だ。
生まれてこの方門限を破った事は一度も無いのだ。そもそも、それを破ってまで成し遂げたい都合などそうそうあろうはずがない。他のやつらはよく家の人に叱られたと文句を言っているが、けしからんとしか思えなかった。
それが今の俺としたことがどうだろう…
「9時に寝れなくなるんじゃないのか?」
世間からすると就寝時間が早いらしい俺の何が悪い。
「お祖父さんも心配するだろうし、真田は早起きなんだから…」
俺だって人並みに気持ちがたるんだっていいではないか。
まだしつこく口を開こうとする幸村の手を、力を込めて握り込んだ。幸村は驚いて顔を上げた。
「いいではないか!もう少しこのままいるくらい…!」
俺は怒鳴りこそしなかったが、幸村の大きく開いた瞳孔を覗いて威圧くらいはしたと思う。
幸村に俺の威圧が通用するかはわからないが…このまま黙って引き下がるのは俺の気持ちが許さなかった。
つまりこれまでのように幸村に従うつもりは無いのだと、はっきり自覚した。
「幸村」
はっと息を呑む幸村の怯えたような瞳を見つめた。
「俺はまだ帰りたくない」
半歩後退する幸村に合わせて、俺は間合いを詰めた。
「だからおまえを帰すわけにはいかない。まだおまえと一緒にいたい」
俺が初めて家族に背いた瞬間だった。
大切な家よりも幸村を選んだ事に興奮していた。
そして幸村の心を支配している実感を得ると、俺の言動は止まらなくなっていた。
ガラスに映るカラフルな円形の電飾を見つける。
慣れないはずのスマートフォンを片手に操作して、
「行きたい所がある」
迷いなく幸村の手を握った。
手を引けば、弱く抵抗される。
(帰らないと)
幸村の顔がそういって、狼狽えているのがわかった。
しかし俺は、たった今から幸村に従うだけの男はやめたのだ。逆らう事も時には正解なのだと10年も傍にいながらようやく理解した。
「行くぞ」
幸村の抵抗はもとより本気ではないから、あっさり俺の手に引かれてくれた。
(おまえも自覚してもらうぞ、幸村)
俺は幸村を連れて、先を睨むようにして周囲の人の目から離れた。
「なんだよ…この手」
せめて幸村の抱いた感情が"困惑"ではなくて"当惑"であれば良いと願う。
俺は自分の感情が起こした行動に引っ込みがつかなかった。しかし幸村は重ねた手をそのままに、黙って夜景を見つめるフリをしてくれた。
どう切り出したらいいものかわからなくなって、いたずらに時間が過ぎた。そんな情けない俺に、
「…そろそろ帰らないとだめなんじゃないのか」
幸村は遠回しに、この状況をなんとかしようとしているのか。
ふたつの手は、重なったまま石になってしまったのではないかと思うくらいずっと動かせずにいる。
「早く帰らないと君の家…」
門限に厳しいのは承知の上だ。
生まれてこの方門限を破った事は一度も無いのだ。そもそも、それを破ってまで成し遂げたい都合などそうそうあろうはずがない。他のやつらはよく家の人に叱られたと文句を言っているが、けしからんとしか思えなかった。
それが今の俺としたことがどうだろう…
「9時に寝れなくなるんじゃないのか?」
世間からすると就寝時間が早いらしい俺の何が悪い。
「お祖父さんも心配するだろうし、真田は早起きなんだから…」
俺だって人並みに気持ちがたるんだっていいではないか。
まだしつこく口を開こうとする幸村の手を、力を込めて握り込んだ。幸村は驚いて顔を上げた。
「いいではないか!もう少しこのままいるくらい…!」
俺は怒鳴りこそしなかったが、幸村の大きく開いた瞳孔を覗いて威圧くらいはしたと思う。
幸村に俺の威圧が通用するかはわからないが…このまま黙って引き下がるのは俺の気持ちが許さなかった。
つまりこれまでのように幸村に従うつもりは無いのだと、はっきり自覚した。
「幸村」
はっと息を呑む幸村の怯えたような瞳を見つめた。
「俺はまだ帰りたくない」
半歩後退する幸村に合わせて、俺は間合いを詰めた。
「だからおまえを帰すわけにはいかない。まだおまえと一緒にいたい」
俺が初めて家族に背いた瞬間だった。
大切な家よりも幸村を選んだ事に興奮していた。
そして幸村の心を支配している実感を得ると、俺の言動は止まらなくなっていた。
ガラスに映るカラフルな円形の電飾を見つける。
慣れないはずのスマートフォンを片手に操作して、
「行きたい所がある」
迷いなく幸村の手を握った。
手を引けば、弱く抵抗される。
(帰らないと)
幸村の顔がそういって、狼狽えているのがわかった。
しかし俺は、たった今から幸村に従うだけの男はやめたのだ。逆らう事も時には正解なのだと10年も傍にいながらようやく理解した。
「行くぞ」
幸村の抵抗はもとより本気ではないから、あっさり俺の手に引かれてくれた。
(おまえも自覚してもらうぞ、幸村)
俺は幸村を連れて、先を睨むようにして周囲の人の目から離れた。
