十二月のしきたり

pm.13:05

ーーーてめぇらデキてンのかよ

他人の目から見て、そう見えたのだとしたら…
俺は真田を傷付けようとした男に激しい怒りを覚えたが、どこをどう見てそう感じ取ったのか問い質してみたくもあった。

俺は真田を庇った。
正確には、彼の右腕を守らなくてはいけないと思った。
真田の右腕は俺の宝だ。俺のテニスはこの腕に支えられて生かされた。そして近い将来もラケットを振るうであろうおまえを見届ける俺のためにも。

「デキている」

同じ言葉でも、真田の口が声にするのでは訳が違う。俺は息を詰めた。

「デキているとは、どういう意味なのだ」

「さあ」

俺は魚のフライを挟んだハンバーガーをかじりながら、さほど興味がないみたいに答えた。
実際は、落ち着かない気持ちをどうしようかと思い悩んでいる。真田の問い掛けに、ほっとしたのも束の間、胸の奥が寂しくなった。
知らなくてよかったと思う半面、残念な思いを捨て切れないでいる。

「幸村、黙り込んでどうしたのだ」

「なんでもない。あんな人の言う事なんて気にするなよ」

「それもそうだが…俺が離れていたばかりにあんな目に合わせてすまなかった」

「別に、おまえに俺を守る義務があるわけじゃないだろ」

「そうかも知れんが、俺が独断で決めているのだ」

勢いよく言い切った真田は、がぶりとホットドッグを頬張った。

「まあ…さっきはおまえに守られてしまったが…」

ドリンクのストローをくわえながら、不本意な結果に不満を表す顔を俺に向けてきた。

「残念だったな」

「次は必ずやり遂げるぞ」

「あんな事が2度あってたまるか」

「有り得そうだから肝に銘ずるのだ」

不満を決意に固めた真田の目力を前にして、俺は心理的に圧倒された。

(そこまで言うならさ…)

俺は俯いて、テラス席で冷えた手のひらをホットティーのカップで温めた。
10/20ページ
スキ