十二月のしきたり

pm.12:46

プレゼントを無事に用意できて気持ちが浮かれた俺は、手洗い場の前に戻ったが、そこに幸村はまだいなかった。

(やけに遅いな)

嫌な予感に突き動かされて中に入ると、すぐに状況を理解した。
幸村は二人の大学生くらいの男に絡まれていた。

『キレーなお兄さん、俺らと遊びに行かない?』

幸村が無視を決めて通り過ぎようとした時、肩を突かれて尻もちをついた。しかし幸村は、卑下た笑いを浮かべる相手に怯まない。キッと相手を睨み据えている。
男たちは一瞬、珍しいものでも見たように目を丸くすると、またニヤリと笑って、男の一人が口笛を吹いた。
その様子を陰から見ながら、なぜ男たちがそんな素振りをしたのか、わかってしまった俺も最低だ…

(幸村!!)

倒された勢いで乱れた前髪から覗く幸村の瞳は、抜け切らない酒のせいか、それとも悔しさのせいか濡れている。そんな歪んだ表情で下から真っ直ぐに見上げられれば、あるいは俺も…

「俺の連れに何か用ですか」

男たちの背後から声をかけると、俺は二人と対峙した。
やがて、バツが悪そうに舌打ちした男が横を通り過ぎる。それに気を取られていた俺は、もう一人が空き缶を手にしたのに気付けなかった。

空き缶が音を立てて転がった時、俺は幸村によって庇われていた。俺は庇われた拍子に倒れた身体を起こしながら、目の前の幸村の、苦痛とも闘志とも受け取れる、青い炎を宿した瞳を見た。
先刻までの、潤んだ眼差しはもうどこにもない。

「真田、大丈夫か?」

俺の両肩に両手を置いた幸村に、面と向かって聞かれると、黙って頷く事しかできなかった。

『チッ…てめぇらデキてンのかよ』

男が残した捨て台詞の意味が俺にはわからなかった。  
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