十二月のしきたり
am.11:24
よく勘違いされるが、俺と幸村は学校以外でそう頻繁に会っているわけではないのだ。
学校も部活も休みの日には、普段繋がっている糸がぷつりと切れるみたいに、音沙汰がなくなる。
後になって人の口から、休日は幸村と出かけただの、長電話しただのと聞かされる。
『休日の幸村っていつもああだよな』
そう同意を求められたところで、俺には何のことやらで返す言葉に詰まっていると、
『幼馴染なのに?仲悪いのか?』
そう問われて、また首を傾げる羽目になるのだ。
仲は悪くない。幼馴染として幸村の本来の顔を知っているのも俺だけだという自信もあった。
では何が俺の胸の内をざわつかせるのか。
車窓に見える色彩の少ない冬の景色を眺めた。
正面を向けば、座席の端の仕切り板に寄りかかって幸村は文庫本を広げていた。
ドアが開くたび、乗降客が俺たちの間を行き来する。
冬の低い日差しが、幸村の片頬を明るく照らしていた。
(次、降りるぞ)
俺は組んでいた腕を下ろして、リュックのショルダーハーネスの片方を右肩に掛けた。
ちらと目配せすれば、わかったように幸村が読みかけの本を閉じようとした。その時、電車が大きく揺れた。
「あっ、と…」
前のめりになった幸村の腕を咄嗟に取った。
俺は幸村を助けたが、その手にある本の内容を見極めようとした。幸村がどんな本を読んでいるのか知りたかった。本人に聞いて教えられたところで、俺にはその本の良さを分かち合う自信がなかったから、盗み見るような真似をしたわけだ。
だがやはり、一瞬の事でそれは叶わなかった。
「悪いな、ありがとう」
幸村は本を閉じると、肩に掛けているトートバッグに仕舞ってしまった。
幸村の好きなものを知るのがこわくなったのはいつ頃からだろう。
幸村の好きなものを好きになれないくせに、幸村に笑顔でそれを語られた時にはきっと、「俺も好きだぞ」と、簡単に嘘を言って返してしまうに違いなかった。
もしそうなってしまえば、引き返すのは難しい事もわかっていた。そして俺は幸村を騙し続けるだろう。
よく勘違いされるが、俺と幸村は学校以外でそう頻繁に会っているわけではないのだ。
学校も部活も休みの日には、普段繋がっている糸がぷつりと切れるみたいに、音沙汰がなくなる。
後になって人の口から、休日は幸村と出かけただの、長電話しただのと聞かされる。
『休日の幸村っていつもああだよな』
そう同意を求められたところで、俺には何のことやらで返す言葉に詰まっていると、
『幼馴染なのに?仲悪いのか?』
そう問われて、また首を傾げる羽目になるのだ。
仲は悪くない。幼馴染として幸村の本来の顔を知っているのも俺だけだという自信もあった。
では何が俺の胸の内をざわつかせるのか。
車窓に見える色彩の少ない冬の景色を眺めた。
正面を向けば、座席の端の仕切り板に寄りかかって幸村は文庫本を広げていた。
ドアが開くたび、乗降客が俺たちの間を行き来する。
冬の低い日差しが、幸村の片頬を明るく照らしていた。
(次、降りるぞ)
俺は組んでいた腕を下ろして、リュックのショルダーハーネスの片方を右肩に掛けた。
ちらと目配せすれば、わかったように幸村が読みかけの本を閉じようとした。その時、電車が大きく揺れた。
「あっ、と…」
前のめりになった幸村の腕を咄嗟に取った。
俺は幸村を助けたが、その手にある本の内容を見極めようとした。幸村がどんな本を読んでいるのか知りたかった。本人に聞いて教えられたところで、俺にはその本の良さを分かち合う自信がなかったから、盗み見るような真似をしたわけだ。
だがやはり、一瞬の事でそれは叶わなかった。
「悪いな、ありがとう」
幸村は本を閉じると、肩に掛けているトートバッグに仕舞ってしまった。
幸村の好きなものを知るのがこわくなったのはいつ頃からだろう。
幸村の好きなものを好きになれないくせに、幸村に笑顔でそれを語られた時にはきっと、「俺も好きだぞ」と、簡単に嘘を言って返してしまうに違いなかった。
もしそうなってしまえば、引き返すのは難しい事もわかっていた。そして俺は幸村を騙し続けるだろう。
