めくるめくテニスをしよう


幸村が遠慮なく真田の負け組ジャージに涙を吸わせていた同じ頃、死角のない監視カメラの映像を眺めるコーチ二人がいた。

「あらら…フラれちゃいましたね?黒べぇ」

「私は手助けをしただけです」

斎藤におちょくられて黒部は努めて冷静に答えたのに、

「機嫌を直しなよ」

このメンタルコーチ相手には通用しない。

「ああ見えてまだ中学生ですから。友達は大事にしないと」

「友達か…」

「うん?」

「幸村精市…面白い選手がいたものです」

「黒帽子の…彼が一枚噛んでいるから面白く育ったんだと思うけどなぁ」

「一枚どころか二枚も三枚も噛んでいます」

黒部にしてはムキになった態度がおかしかった。

「黒べぇは優しいねぇ。二人の仲を取り持ったわけだ」

退室した黒部からモニターへと視線を戻した斎藤はくすりと笑った。

「あの二人は甘えてなんかないよ黒部ぇ。甘えられないままここまできてしまったんだよね?そろそろ甘えてみてもいいんじゃないかなぁ。きっともっと強くなりますよ」

モニターに映る二人をそっと指でなぞった。
そこへ立海のメンバーが走り込んで来て、幸村の背中をさすったり、真田の肩を抱いたりして二人を囲っていた。


end
12/12ページ
スキ