期待してるよ
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当日は平日なので、ブーケを持って此処からそう遠くない本家に帰った
『少し早いけど、おめでとうお母さん』
「わぁ…!、可愛いバラのブーケ!、ありがとう流菜」
喜んでくれて良かった
嬉しそうにブーケを愛でるお母さんと一緒に微笑む
お父さんは遠方の任務で記念日当日まで帰れないみたい、残念だ
『………』
「何かあったの?、さっきからぼーっとして」
『…分かる?』
「何年アンタの母親やってると思ってんの」
お母さんには隠し事は出来ないなぁ…
『気になる事があって…』
「うん」
『ブーケを買いに行ったら五条先生が居たんだ』
「えぇ?、花に興味無さそうな五条君が?」
言われてみれば…
お花見とか、そういう楽しいイベントとセットなら興味ありそうだけど
『それで気のせいかもしれないけど、先生…、沈んでいた様に見えたというか…』
「沈んで…、ますます意外。人違いじゃないの?」
『会話したよ、お母さんに世話になったって言ってた』
そう言うと、お母さんは苦々しい顔をした
「まぁ…、礼儀知らずで生意気で、帳を降ろさず建物半壊なんてしょっちゅうで対処に当たるの大変だったわ」
『うわ…』
あの性格はその頃から健在だったんだ
「娘の教師になったと知った時は驚いたけど…、五条君、ちゃんと先生やってるみたいね」
『数分の遅刻と、仕事の丸投げはしょっちゅうあるけどね』
「……一回、乗り込もうかしら…」
『注意しに行くと言って』
お母さん、ヤンキーみたいで怖いよ
モンスターペアレント…
「あぁ…、もうそんなに経つのか」
『?』
何か思い出したのか、そっと瞼を伏せるお母さん
「百鬼夜行事件は知ってる?」
『うん、ちょうど一年前に起きた事件でしょ』
寮を出る時、見知らぬ人達が喪服を纏って高専に来ているのを見かけた
何だろうと足を止めると、一周忌という言葉が聴こえてきたのでその事件から一年経つんだと振り返った
『もしかして、その事件で…』
「そう、彼は親友を…」
言葉は続かなかったが理解出来た
亡くして、しまったんだ…
「この界隈は早すぎる別れが憑き物…、でも、だからといって、関わる事を恐れてちゃ駄目よ」
『うん…』
いつその時が来ても後悔しないように前を向いて、皆と向き合っていこう
少しでも楽しい記憶となる様に…
それは…
『五条先生ー!』
談話室のソファでだらんと寛ぐ先生を見つけて駆け寄った
「おっはー!、昨日ぶりだねっ、プレゼントは上手くいった?」
『うんっ、ついでに先生が高専生の頃の話も聞いたよ』
「は?、何で?」
目隠しをしてても分かるくらい怪訝そうな顔をする先生
『えーっと、…流れ、で?』
「そこは疑問系にするとこじゃないでしょ」
あのチンピラ教師なら言いそうだけどと陰口を言う先生
娘の前でチンピラ呼ばわりかいっ
『今と変わらないので問題ないじゃないですか』
「フフン、今も変わらずナイスガイだからね」
『…先生ってホント、自分大好きですね』
いつも通りの先生に苦笑する
すると古時計が鳴り、予鈴を知らせる
「さて、そろそろ教室に行こうか」
『はい、…あ、先生!』
「ん?」
立ち上がり伸びをする先生に一歩近付く
予想してなかったのか、珍しく間抜けな顔をする先生
『私、先生みたいな呪術師になれるよう頑張ります!』
だって、それは先生の事だなって思えたから…
ニッと笑えば目隠しの奥にある瞼が小刻みに動くのが見えた
「全然話が見えないけど…、ま、頑張ってよ、楽しみにしてる」
『はい!』
拳を顔の高さに作って頷くと、背後から足音が聴こえてきた
「あ、いた!、ちょっと流菜、先行かないでよ、捜したじゃん!」
『ごめんごめん!、ちょっとね』
怒っている野薔薇に駆け寄り必死に宥める
先生はその姿を後ろで優しい笑みを浮かべて見守っていた
ーー今の高専を、僕の教え子達を、お前に見せてやりたいよ…
「ほら、早く行くわよ。遅刻したら先生みたいになっちゃう」
『野薔薇、先生の前で容赦ない…。先生、早く早くっ』
「おー」
温かな日差しと優しい風に見守られながら校舎を歩く
今日も楽しい一日(地獄)になりそう…
完
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