始まり
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熱を引かせたくて、さっきの水を飲もうとダイニングに行けば噂の目隠しが無造作に置かれていた
『こんな所に…』
「ん、あぁ、定位置だよ」
『定位置、なんだ』
直ぐ使うから片付ける必要がないという事だと理解する
でもこのままじゃ変なシワが付きそうなので手に取って伸ばした
『サングラスの方が楽そうなのに何で目隠しにしたの?』
「僕は今グレイトティーチャーだから、サングラスだと威圧感あって生徒達に怖がられるだろ」
『五条君…、うん、って言いづらいよ』
しれっとグレイトを付けたのは良いとして
あの姿は別の問題が発生してると思う
目隠しをそっと置いて水を飲む
火照った顔の熱が少しマシになった
「流菜、突っ立ってないでコッチ来なよ」
『う、うん』
言われてしまえば断るのは変な訳で…
心を落ち着かせてから五条君のいるリビングに向かう
『………』
ソファに座って資料に目を通している五条君
内容が見えそうなのを言い訳に、隣に座らず敷かれたラグの上に座ってソファを背もたれにした
『五条君、お風呂ありがとう。後着替えに制服も』
「んー、にしてもブカブカだね。縮んだ?」
『縮んでない』
この人は呼吸をするのと同じでからかわないと生きていけないのか
「十三年分の汚れはちゃんと落ちた?」
『そんなの無いから!』
女性に対して言う台詞じゃない
相手によっては殴られてるよ
「無かったの?」
『あったら今頃、五条君の鼻は曲がってるよ』
「フハッ、言えてる」
資料を捲る音がする
会話をしながら資料を頭に入れる器用さが羨ましい
『仕事、忙しい?』
「んー、まぁね。自分で呪いを祓うのは勿論、生徒達の教育もあるから」
『そっか…』
そんな多忙な彼の前に現れて、お世話になっているのか…
今も本当は仕事に集中したいのかもしれない
膝を抱えて俯くと後ろから溜め息が聞こえて、バサッと資料を下ろす音がする
「あのさぁ、一応言っておくけどお前が気負う必要これっぽっちもねぇから」
『え…?』
「言わせんなよ」
言葉の乱暴さとは裏腹に頭に叩く手は優して…
上手く言えないけど、これが五条君の優しさなんだって思えて胸が熱くなった
『ごめん…』
「聞きたいのはそんな言葉じゃねぇっての」
『……ありがとう』
「ん、よく出来ました」
『あ、もぅ…っ』
最後にクシャクシャと髪を乱され文句を言うと笑われた
本当に分かりにくい
最低な奴と勘違いされてもおかしくない程に
『五条君…』
凄く緊張する
でも…っ、今、伝えなきゃ…
『私を、見つけてくれてありがとぅ。…忘れないでいてくれて、ありがとう』
心臓の音が全身に響いて苦しい
それでも伝えたい、届いてほしいっ
「……だから、そういうの言わなくていいんだよ」
私の気持ちは軽く受け流して資料に再び目を通す五条君
一瞬だけ見えた頬は私と同じ色に染まって見えたのは気のせいかな
『ふふ…っ』
素っ気ない態度、でも私にはそれで充分だった
だって裏を返せば、言わなくても伝わってるって事だから
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