始まり
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ーー
『凄い…』
私は未来に来てから何回凄い、を言っているのか…
目の前の広い浴室に裸のまま立ち尽くす
ピザが届くまで時間があるから風呂でも入ればと言われたのが数分前
躊躇いを見せると変な手つきで近付いて来たので逃げる様にお借りした
『五条君の印象がぁ…』
シャワーを浴びながら思うのは、勿論彼の事
強くてカッコよくて
基本自由で、好き嫌いがはっきりしてて
思った事は誰であろうと容赦なく言う
それは変わってない気がする
でも、何というか…
親友の夏油君には腕を肩に回したりとかしてたけど、女性にはそういうスキンシップをしてなかったような
ハグとか握手とか
それと自分の事を僕というようになり、大人になったからかトゲトゲした印象が無くなり、優しくなった気がする
ゆっくり温まってきなよって言われたし
俺俺イケイケのヤクザにしか見えなかったあの五条君が
高専の教師をしてると言っていたから、その影響かな?
シャワーを止めて英語で書かれた高そうなソープを出し、スポンジで泡立て身体を擦っていく
『あれ、でも…』
何で五条君が教師を?
弱い奴を嫌っていた筈の彼が教える側に立つなんて変だ
何か、教師になるきっかけがあった…?
「流菜ー、着替えとタオル此処に置いとくよ」
『う、うん。ありがとっ』
扉の向こうから声を掛けられ、肩を上げ慌てて答える
遠ざかる気配にホッとして、身体を洗うのを再開する
『聞いたら、答えてくれるかな…』
私の居なくなってから十三年
彼はどんな人生を歩んできたのか…
楽しい事だけじゃなく、きっと辛く悲しい経験もしただろう
レバーを引いて再びシャワーを出し、身体中の泡を流していく
充分に流してからシャワーを止めて、いつ沸かしたのか分からない広い浴槽に浸かった
五条君は28歳
私は彼の二十八年の中のほんの数ヶ月しか一緒に居なかった
それでも私の事を覚えててくれた
十三年も経っているのに私の呪力を感じて見つけてくれた
あの時、見つけてもらえなかったら
きっと不安を抱えながら、一人で夜道を歩いていただろう
『……お礼、言わないと』
改めて言うのは恥ずかしいけど
伝えようと心に決めて拳を作るとバシャと水音が鳴った
用意されたタオルを使い、着替えに袖を通すと言わずもがなブカブカだった
五条君にとっては七分袖の黒い上下スウェット
私が着ると曲げないと指まで隠れてしまう
『あの身長だもんな…』
少しでいいから分けて欲しい
躓かない様に下も折り曲げてふと気付く
畳んで置いていた制服が無くなっていた
『制服が、ない…』
犯人は彼だろうと思い、リビングに戻る
『五条君、私の制服知らな、い?』
ソファに座る彼の後頭部を見た私は違和感を覚えた
さっきと髪型が違うような…
「あぁ、制服なら洗濯中。明日もそれ着て出掛けるからね」
『っ…』
振り返る彼の姿に目を見開いた
私服に着替え、目隠しからサングラスに変えて髪が下りている五条君が居たから
「どうかした?」
『いや…、ミナレタゴジョ君、なってるカラ…』
「流石に家では取るよ、ってか何でカタコト?」
『べ、…っつに、急に、変わったからビックリしただけ…』
私の知る彼の大人版
そう感じたのは二度目なのに最初の時より動揺してしまう
「イケメン過ぎてびっくりした?、惚れるなよー」
『誰がっ!』
フフンと顎に手を当てドヤ顔する彼
イケメン過ぎてビックリしたのは認める
でも惚れてはない、絶対っ
なのに湯上がりで温かい身体が更に熱を帯びていた
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