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「ねぇ、僕だと分かった所でもう一回ハグしよーよ」
目隠しをし直した五条君が上機嫌で言った
『は!?、ななな、なん…っ』
「ハハッ、マジで流菜だ。ウケる」
きっと私の顔は真っ赤なんだろう
相変わらず免疫無さ過ぎと言って嗤う目の前の人は間違いなく五条君だ
「で、どうやって生き返ったの?」
パッと離れた五条君に変な質問をされる
切り替えが早いのも変わらない…
『生き返ったって…、死んでたみたいに言われても』
「死んでたよ、十三年くらい」
『…………はい?』
しれっと言う彼の言葉に首を傾げる
「僕、28だもん。因みに高専教師で一年生を担当してるよ」
『………』
あぁ、私の知る五条君と違うのは十三年経ってるからか
充分あった身長はさらに伸びて、声とか雰囲気も大人びて色気が…
『って、えぇ!!?』
「こら、近所迷惑になるでしょうが」
『ごめっ、い、いやっ、あの五条君が?!、その格好で先生!?』
「そっちか、それ以上言ったらマジ泣かすよ」
『っ!』
声色と見えない目から本気の圧を感じて私は口を塞いで黙った
「冗談だよ、自覚あるし」
『………』
自覚あるんだと思ったが口には出さないでおこう
「話を戻すけどどうやって生き返った?、出張からの帰り道、突然お前の呪力を感じたんだけど」
『私も何が何だか…、いつの間にか気絶してて目が覚めたら十三年後に来てたとしか…っ!、硝子はっ?、硝子は無事っ!?』
ふと思い出した彼女の存在
縋る想いで彼の腕の服を掴んで見上げると反対の手でポンッと頭を叩かれた
「大丈夫、生きてるよ。硝子は今、高専で医師をしている」
『そ、そっか…、よかっ…た…』
安心すると力が抜け、フラつくと腰に手を回され支えてくれた
「っと、平気?」
『うん…、ありがとう、本当に良かったぁ…』
彼を支えに立ち直し安堵するとフッと笑む五条君
「アイツに会う時は覚悟しとけよ」
『う…、はい』
目の前で仲間を失うという地獄を経験させてしまったのだから
全てを受け入れないと…
「にしても、目が覚めたら十三年後って…。対象を未来へ飛ばす術式だよな?、そんなの存在するのか?」
『聞いた事ないよね…』
二人で頭を捻るが結論は出ない
「ま、分からない事は追々って事で。取り敢えず高専に戻ろうよ」
『そうだね、帰って休みたいし…って』
「?、何?」
『私の部屋ってあるの…?、生き返ったって事は十三年前に殉職した事になってるんじゃ…』
「あー…」
死んだ人間が十三年後、実は生きてたなんて
葬式やら書類手続きなんてとっくに終わってるだろう
「じゃあ、僕の所に来ればいいよ」
『へっ?』
「知っての通り僕、最強だから結構稼いでんだよね。広い部屋だからお前一人くらい余裕」
『で、でも…』
男女が一つ屋根の下って色々マズいのでは?
『硝子に会って、泊めてもらうのは…』
「硝子はこの時間忙しいから連絡付かないよ」
『そう、なんだ』
医師って言ってたし、会いたいけど忙しいなら無理か
「だーいじょうぶ大丈夫!、流石に生徒と同い年のお前に手なんか出さないって」
『あー、そうなるのか…』
タイムスリップで年齢が恋愛対象から外れた
別に好きでは無いけど、同級生に女として見られないのは、それはそれで地味に傷付く
「どうすんの?、ホテル代あんの?」
『うっ…』
「ほらほら、どーすんのっ?」
は・ら・た・つ!
ヘラヘラと折れるのを待ってるこの男を頼るしかないのは屈辱…
でも背に腹は代えられない
『……よろしくお願いします』
「顔歪んでるよ」
『気のせいじゃない?』
うん、気のせいだ
「さて、そうと決まれば…っと時間も時間だし、最短ルートで帰ろう。はい、捕まって」
『え、捕まるって?』
差し出された大きな手と五条君を交互に見る
「いいから、はよはよっ」
強引に抱きしめた人が今度は私から来るのを待っている
さっきは腕を掴んじゃったけど、あれは勢いだったからで…
自分から触れると思うと、変に意識してしまう
そんな葛藤を悟られない様にそっぽを向いて手を乗せた
『っわ』
繋いだ手を引っ張られたかと思うと彼の胸板にぶち当たる
怯んでいると腰に手を回されさらに密着してしまう
『な、ななな…っ』
「メンゴ、この方が楽なんだよね。僕がいいって言うまで離れちゃ駄目だよ」
そう言う彼に文句を言ってやろうと思ったが景色がパッと変わりそれどころじゃなくなった
『え…、えっ!?』
気付けば足が地面から離れていて、学校の屋上を見下ろせる高さまで来ていてパニックになる
『ごじょ、君…、え、なに、どーなって…?』
「喋ってると舌噛むよ」
『っ』
パッ、パッと景色が変わっていく
混乱する私を置いて瞬間移動していき、気付けば高専付近の上空にいた
「はい、とうちゃーく!、もう離れていいよ」
ゆっくり下降していき、高層マンションの前に着地した所で腕から解放される
『五条君、魔法使いに転職した…?』
「メルヘンだねー」
私の反応を楽しむ五条君
「僕が最強だから出来る事だよ」
『……分かるような分からないような』
御三家の一つ、五条家の血を引く中で彼の呪術師としての才は特別なんだと聞いた事がある
充分強かったのに、私がいない間に更に鍛えて強くなったのだろう
『私も、強くならないと』
五条君の様な才能は無いけど
隣に立てるくらいにはなりたいな
「………」
そう意気込んでいる私を見下ろす彼は何を思っていたのか
私は気付かずにいた…
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