始まり
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ー術式により百年、千年、それ以上闇を彷徨うと思っていた私の身体
だけど其れは前触れも無く破られた
『ん……』
目を開けると薄暗かった
ドサッと地面に落ちた痛みが遅れてきて身動ぎする
『ったぁ…』
身体を起こし、痛む背中を擦りながら辺りを見ると何処かの建物の長い通路に居た
『此処は…、学校…?』
壁を見ると片方は窓、もう片方は閉め切った扉と窓が続いていて夜の学校の廊下だと気付いた
『!、皆っ!』
そうだ、私達呪霊祓いに来たんだ
それで私は地面に呑み込まれて…
どれくらい時間が経ったのだろう?
誰も居ないし、外の帳もない
もしかして私、死んだ事になってる…?
『と、取り敢えず連絡を』
ポケットから携帯を取り出すが生憎のバッテリー切れ
もっと長く使えないかな…
『…………無人島?』
いやいや、此処は東京
手持ちのお金で高専まで帰れるはず
『よし、孤独からの脱出』
高専に行けば皆に会えて、状況も分かるだろうと考え校舎を出た
タクシーで目的地言えば一番早いが、足りないだろうなと乾いた笑みを零し、閉められた正門に手を掛けると…
ザッ!
『!?』
突然背後から靴が擦れる音がして、バッと振り返った
其処には学ランみたいなのを着た長身男性が立っていた
『っ……』
音が聴こえるまで気配なんて無かった
何処から出て来た?
しかも白髪目隠しって、不審者全開…
「本物、いや……だとしたら…」
顎に手を当て考えを巡らす不審者さん
敵意は無さそうだけど、見た目から普通じゃない行動を取りそうで後退る
「?、何で逃げるの?」
『だ、だって…』
見た目がヤバいなんて言ったら何されるか
どうする?、どうやって切り抜けるっ?
「怪しい者じゃないよ、っていうか僕だよ、僕」
『…僕僕詐欺』
「違う、電話ですらないし。だから変な目で見るの止めようね、流菜」
『!、何で名前…っ』
一瞬だった
名前を呼ばれて動揺していると不審者は一気に距離を詰めてきた
目と鼻の先にある彼の顔に目を見開いて息を呑む
「やっぱり、本物だ…」
『…っ』
笑みを濃くした唇にそっと囁かれ、どういう意味なのか訊ねる前に抱きしめられた
『ちょ…っ』
「逃げるなよ…っ、もう少し…」
振り解けない程強く言葉も乱暴
だけど絞り出す様に出す声は嘘と思えなくて、心配したという感情が乗っていて抵抗する気力が失せていく
もしかしたら、幼い頃の友達なのかもしれないと思い直してしまう
『貴方は…、誰ですか?』
暫くして抱擁は解かれたが、両肩を掴まれたままなので離れる事が出来ず至近距離で見上げる
「敬語は止めてよ。気持ち悪い」
『っ、酷い』
「僕の事思い出せない人に言われてもなー」
『うっ』
そんな事言われても、こんな奇抜な知り合いはいなかった、筈
「って待てよ、当時は俺って言ってたなー」
『あの…、埒が明かないの名乗って貰えませんか』
当時?、俺…?
「ハーー、しょうがないか」
呆れ混じりの溜め息を付いた彼は目隠しに手を掛けた
下にズラすにつれ、逆立った髪が元の位置へと下りていく
"俺、最強だから"って言っていつも弱い私を馬鹿にしてた同級生
白髪でいつもサングラスして不良にしか見えないあの…
「いい加減俺だと気付けよ」
『!』
頭に思い浮かべた彼と、此処に居る彼が重なる
『ごじょー…君…?』
「………」
偶にしか見えなかった宝石の様に透き通る瞳を開いた彼は、返事の代わりに肩を竦めて口角を上げた
『っ……』
いつものサングラス越しと違うだけなのに
目が合うだけで心臓がドクンと身体中に響いて
顔が熱を持って熱かった
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