始まり
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目の前にいる彼が背を向けたまま押し黙る
私は掛ける言葉が見つからなかった
どんな言葉を掛けたって
言い訳にしかならない
それくらい、私の一度の油断は彼の心を傷付けた…
ーー
東京のとある学校の呪霊討伐に一年生だけで引き受けた
強い呪霊は五条君と夏油君が討伐に行き、三級呪霊以下は私と硝子で討伐した
「これで全部か…」
『ふぅ、疲れた…、あ』
任された呪霊を全て祓い終えた頃、上から感じていた強い気配も消えて五条君達も終わったのだと理解する
『これでこの学校の生徒も襲われる事はないね』
「あぁ」
呪霊の源はいじめだった
成績優秀な男子生徒を体格の良い運動部3人が一方的に言葉や暴力で追い詰めるという
クラスの人達も先生も見て見ぬ振りをする、そんな環境が呪霊を誕生させたのだ
「出来る事なら、このままずっとがいいけどね」
『うん…』
それはきっと、無理なんだろう
人間が生きている限り、この世に負の感情が生まれ呪霊を生む
「ま、私達が暗くなってもしょうがない。合流したら自販機でジュースでも買おう」
『そういえば喉渇いたかも、何飲もうかなー』
廊下を歩きながら話を膨らませていると…
『!』
背後で嫌な気配がして咄嗟に振り返る
「どした?」
『……』
何もない、気配も消えた
気の所為だった…?
それでも一瞬感じた呪霊らしき気配に私は警戒する
「まさか、まだ…」
緊張感が伝わった硝子も辺りを警戒する
静かな時が流れる…
『あ…っ!』
突然足元が黒くなり、底なし沼の様にゆっくりと身体が沈んでいく
『なに、これ…!?』
「流菜!?」
抜け出そうと藻掻くが意味はなく、術者を探すが何処にも居ない
「今引き上げるっ!」
硝子が私の手を取り引っ張るが止まらず腹部まで沈んでいく
ー恐い
ただ、それだけが頭を支配していて冷静な判断が出来なかった
「悟!、傑!、お願いっ!、来て!」
私を引き上げ続ける彼女が叫んだ
此方に来ている筈だが、まだ声は届かない距離のよう
「流菜、流菜…っ!」
肩まで浸かって残るは上げた両手と顔だけになる
もう駄目だと頭が理解した時、不思議と冷静にしなくてはいけないことが浮かんだ
硝子を巻き込んではいけない
「っ!」
私は硝子の手を解き、突き飛ばした
「っ〜、流菜っ!、何で…!?」
首だけになった私
絵面的に酷いだろうな…
『硝子、五条君、夏油君ごめん、……私の分も生きてっ』
最後の願い
本当はもっと生きたかったが、叶わないならせめて
遠くで駆けつけて来る足音が聞こえる
五条君達かな?
「おいっ、ーーー…?!」
「流菜っ!、ーーーーー」
耳まで沈んでもう音が聞こえない
せめて、最後に皆の顔を見ようとするが滲んで見えなかった
駄目だな、私
最後は笑顔を見せたかったのに…
後悔に捕らわれながら、頭部まで完全に沈んだ…
〈サァ、イキマショウ…〉
何処からか誰かの声が聴こえて、閉じていた目を開ける
真っ暗な世界に堕ちていく私の身体
何も考えられない
身体も、指先一つ動かせない
〈ーーーーーー…、〉
大丈夫、何も、恐くない…?
僅かに残った意識が何十倍も遅れて理解する
『ぃ…や……』
嫌だ
私、ワタ、シは…まだ……
その後の言葉は浮かばなかった
思考すら闇に呑まれ、抗う術も無く目を閉じた…
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