始まり
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ー五条視点ー
出張からの帰り道、伊地知の運転で高専に戻る途中だった
僕が呪力感知出来るギリギリの所に突如呪力を感じた
それは懐かしいと思う呪力だった
もういないアイツにそっくりで、違うと否定しても無関係と思えず期待してしまう
「止めて」
「え…っ?」
気付けば伊地知に指示していた
対向車線、後方のどちらも車が走っていない東京の郊外で車が止まる
「ど、どうされましたっ?」
「んー、ちょっと野暮用」
「ですが、これから高専に戻って報告を…「伊地知、後頼んだ」五条さんっ!」
伊地知の言葉を無視して車から降り、無下限の力で瞬間移動する
近付くにつれ、相手の呪力がはっきりしてくる
似てる…、処じゃない同じだ
そんな奇跡、あり得るのか…
ザッ!
『!?』
気配を消す必要は無いだろうと考え、少し離れた所に音を立てて着地した
バッと振り返り固まる少女は脳裏に浮かんだ彼女そのものだ
間違いない、流菜だ
外見だけでなく、僕の眼に見える全てがそう判断した
『っ……』
「本物、いや……だとしたら…」
今すぐにでも駆け寄りたかったが、警戒する彼女に冷静な思考を取り戻し顎に手を当て考えを巡らす
まさか、この僕が十三年も拐かされていたなんて
最強の名を少しの間返上しないといけないくらいの失態だよ、全く
まっ、返す相手はいないけどっ
「?、何で逃げるの?」
『だ、だって…』
思考していると後ろに下がる彼女
こっちは感動の再会とイキたい所なのに
「怪しい者じゃないよ、っていうか僕だよ、僕」
『…僕僕詐欺』
自身を指差して思い出してとアピールすると余計に警戒され、犯罪者扱いされた
流石に傷付くわー
「違う、電話ですらないし。だから変な目で見るの止めようね、流菜」
『!、何で名前…っ』
もう待つのは辞めて名前を呼んだ
すると彼女はかなり動揺したので安心した
眼で分かったとはいえ、如月流菜だと証明してほしかった
「やっぱり、本物だ…」
『…っ』
生きていた事が嬉しくて我慢出来ず抱きしめた
『ちょ…っ』
「逃げるなよ…っ、もう少し…」
お前は悪くないけど十三年も死んだと思ってたんだ
僕の気の済むまでお前が生きてるんだって事を実感させろ…っ
「…………」
その実感は普通なら最低でも数時間は幸福になるだろうが、六眼を持つ僕は数秒で不安となった
彼女をどうにかして過去に戻さなければならない、これは絶対だ
その為には時間と情報が必要で、上の連中に流菜を受け入れて貰わないといけない
だが問題は戻れるのか、そして戻った先で起きる事を彼女が体験したらどうなるのか
また途中で、今度は本当に死ぬんじゃないか
……アイツの事もある、もしかしたら心が壊れる可能性も…
だったら起きた事全てを伝えて過去を改変…
駄目だ、失敗したら確実に自分を責める
背負うべき罪を押し付けるのはクズすぎんだろ…っ
そんな心情を察せられないようにもう一度ハグを要求したらウブが健在でウケた
アイツが余計な事を考えない様にするには丁度いいと思い、スキンシップをしまくる作戦を実行した
伊地知の空気読めない着信ではちょっとやり過ぎたけど
伊地知、次会ったらマジビンタ
「我ながら酷い作戦だよ、ホント…」
自身の行いに苦笑し、頭を切り替えようとシャワーを浴びる
十三年間間違えていた如月流菜の死因
てっきり対象を無に還す術式だと思っていたが、実際は未来へ飛ばす術式だった
紛らわしすぎんだろ
だとすると術者は十三年のうのうと生きてきたか、あるいは…
「後者だな…」
その方が辻褄が合う
にしても、不可解な点が多すぎる…
何故十三年飛ばしたのか?
狙いは本当に流菜だったのか?
その理由は?
考えたって無駄か…
泡を流し終え、シャワーを捻り前髪を掻き上げる
鏡に映る両親と違うその眼を捉えて嗤う
悪いけど見つけるのは得意なんだ
必ずひっ捕えてやるよ
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