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愛すべき隣人





「ど、どうもありがとう。」

僕は、青年に貸してもらった伸縮性のあるズボンに着替え、深々と頭を下げた。




「もうええって。
困った時はお互い様や。
後で直してもうたるから、それまではそれで我慢しといてな。
…そらそうと、自分、お腹減ってへんのか?」

「え?…いえ、そんなことは…」

タイミングの悪い時に、そんな時に限って僕の腹の虫が鳴いた。
その音を聞いて、僕は今日は朝からまだ何も食べてなかったことを思い出した。
青年は、恥ずかしさに顔を赤らめた僕の様子を明るく笑い飛ばした。



「どうやらお腹の虫は食べたいて言うてるみたいやな。
ちょっと待っとき。今、おいしいもん作ったるからな。」

青年は、そう言って隣の部屋へ行った。



青年の家は、公園から歩いて五分もかからない所にある集合住宅の一室だった。
その建物はさほど大きくなくたった二階までしかないのに、扉の数は十もあった。
当然、一室あたりの面積は狭い。
部屋は三つに仕切られており、そのうちの一番狭い部屋が調理をするための部屋のようだ。
僕が通されたのはその隣の部屋で、驚いた事に部屋の床は植物の繊維のようなもので作られており、部屋の中に置かれている電化製品もやはり原始的なものばかりだった。
僕の推測通り、この世界の文化はとても遅れている。




「は~い、お待たせ!」

青年は電気で熱を伝導させるタイプの鉄板で作られた調理器を持って来て、低い高さのテーブルの上に載せ、さらになにやら食材らしきものを次々と持ち込んだ。
そして鉄板の上に野菜屑を白い液体であえたようなものを広げた。
この世界では、まだ料理を人間が作っているようだ。
食欲をそそるにおいもしなければ、見た目はなんとなく気持ちが悪い…これがこの世界の庶民の一般的な料理なのか?
僕は、どんなものを食べさせられるのかと内心はらはらしながら、彼の調理を見守った。
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