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愛すべき隣人

「え……それはですね…」

「そういえば、自分…荷物はないんか?
全部ホテルに置いてるんか?」

「そ、そ、そ、そ、それは……」



僕は答えに困った。
瞬間移動が一般的な僕達の世界では特に不自然なことではないけれど、この世界ではおそらくまだそんなものは開発されておらず、旅行の際には乗り物を利用したくさんの荷物を持って行くのだろう。
そのことから推測して、彼は荷物も持たずに旅行をしているといった僕に疑惑を感じたのか!?



「まさか、自分……」

青年は、僕の目をじっとみつめる。
まさかって……まさか、まさか、この男は僕の正体を見抜いたのか!?
そんなことがあるはずはないと思いながらも、どんなことにも100%なんてことはないのだという気持ちが不安をかきたてる。
彼が僕をみつめる沈黙の時…きっと、ほんの短い時間なんだろうけど、僕にはとても長いものに感じられた。
もしも、バレていたらとにかく逃げるしかない…
僕は走るのはとても苦手だけれど…




「もしかして、ひったくりにやられたんか!?」

「えっ!?……そ、そ、そ、そうなんです!
実はさっきひったくりに遭いまして…荷物をすべて持って行かれたんです。」

意外なことを言われて僕はうろたえてしまったけれど、これ幸いと、僕は大袈裟に悲しい顔を作り、か細い声で答えた。



「そうやったんか…
えらいことやったな。
……ほんで、警察には届けたんか?」

「は、は、はい。」

良かった…
これで、どうやらこの男の疑惑は晴れたようだ。
この理由を利用して、荷物を探すとかなんとか言って彼から離れることにしよう。



「では、僕、これからもう一度荷物を探してみます。」

「ちょう、待ちいな。」

立ち去ろうとした僕の腕を、青年が力強く掴んだ。
なぜだ!?
まだ、何か僕のことを疑っているのか!?



「な、な、なんですか?」

「……自分…思いっきりお尻破れてんで。」




「え?え?ええーーーーーっっ!」



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