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愛すべき隣人

「え?自分、そんな日本人バリバリな顔してんのに、日本人とちゃうん?
そしたら、何人なん?韓国?中国?」

青年は僕に対する興味を深めたらしく、さらなる質問を投げかけてきた。

失敗した。
彼の話から推測すると…「バリバリ」というのはよくわからないが、どうやら、ここは日本という国のようだ。
おそらく関西というのは地名だったのだろう。
どうしよう…しかし、じっくりと考えている時間はない。
ここは論理的に話すより、曖昧に誤魔化した方が良さそうに思えた。
僕は、さっきよりさらに無理して、僕の人生で最高の愛想笑いを浮かべた。



「冗談ですよ!
僕はバリバリの日本人です。ハハハ…」

しかし、僕の苦労も空しく……
彼の顔からは笑顔が消え、気まずい沈黙が流れた…



僕は、またなにか間違ったことを言ってしまったのか!?
焦る気持ちを押さえ、動揺を悟られまいと、僕はひきつった笑顔を浮かべたまま、彼の反応を待った。



「冗談て……何もおもろない…
これやから東京もんはあかんねん。
話にオチがない…
こっちに来る時は、もっとおもろいこと言えるようにして来なあかんで。
……そんなんでよう大阪の税関通れたな。」



税関…!?もしかしたら、この国では地域ごとに独立していて税関があるのか?
しかし、面白いことが言えないと通れないとは一体どういうことなんだろう?
数々の疑問に僕は推測ですら答えがみつけられず、ただ微笑むことしか出来なかった。



「あかん…ツッコミのひとつも出来へんとは最悪や…」



最悪…!?
僕はなんらかの事情で彼を怒らせてしまったようだ。
対処のしようも思いつかないし、トラブルにでもなってはまずい。
彼からは早めに離れた方が良いかもしれない。



「で、では、…」

「ほんで、自分…今からどこ行くんや?」

立ち去ろうとして僕が口を開くと同時に、彼の言葉が重ねられた。
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