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愛すべき隣人

僕の世界には空間と時間のねじれによって繋がったもう一つの世界があることを僕は発見した。
しかし、それを実証する術がない。
理論的にはそれは疑いようのないものだが、やはり研究というものはそれを実証してこそ意味がある。
実証することは容易い。
その世界に行くことさえ出来れば、僕の研究は確たるものとなる。
だが、二つの世界を繋いでいる通路の出現場所は曖昧で、探知した瞬間にはもう別の場所に移動しているといった風に常に変動を続けている。
しかも、移動先や移動時間に規則性のようなものが一切ないため、次の出現場所の予想さえ出来ない。
出現場所との追いかけっこに、日夜、歯がゆい想いをしていたわけだが、そんなある日、僕にとって思い掛けない出来事が起きた。
僕の世界の二つの月が重なり合うという現象が起きたのだ。
それ自体はこの世界ではずっと昔から十年に一度見られる現象で、そのメカニズムもとっくに解明されているため、科学的に興味をひかれるものではなかった。
ところが、重なり月の朝、いつものように朝食前に通路のデータをちらりと確認した僕は思わず我が目を疑った。
なぜなら昨夜遅くから通路の動きが特定の場所で止まっていたのだから。
その後もしばらく観測を続けたが、一向に動く気配はない。
僕はそれが重なり月の時刻から始まっていることに気付いた。
おそらく、その現象が通路の固定化になんらかの影響を及ぼしているのだと推測した。
もしも、そうだとしたら、この現象は重なり月の間続く筈だ。
詳しいことを調べている時間はない。
リスクはあるにせよ、もう一つの世界に行くとしたら、この時期を逃すわけにはいかない!
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