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愛すべき隣人





「なでなで~」

「なでなで~」



次に僕は低い搭に連れていかれ、そこの展望台に置かれた奇妙な像の足の裏を撫でさせられた。
なんでも、そうすることで願いが叶うとされているらしい。
こういう類いのものはどこの世界、どんな時代にもあるものだけど、たいていは荘厳な雰囲気…少なくとも静かな場所にあるものだが、ここは違った。
信仰の対象物に直接触るというのも不思議な気がしたし、その像自体も頭が尖り、目が酷く釣りあがった子供のような外見で、しかも両足を伸ばして座っている。
僕は、こんな像を見たのは初めてだったから、けっこう興味をひかれてしまった。



「よっしゃ!ビリケンさんにようくお願いしたからこれで江藤君の就職はばっちりや!
江藤君もちゃんとお願いしたか?」

「あ……」



そういえば、てっちゃんは足の裏を撫でた後、両手を合わせて目を瞑っていた。
きっとあれは精神統一だったんだ…
僕は、改めててっちゃんの真似をして、心の中で願い事を呟いた。
もちろん、そんなことで願いが叶うとは思っていなかったけど、ここの人達はそれを信じているのだから、僕もその気持ちを真摯に受け止め真面目に願った。
それは本当に実現したい僕の夢だったから…



その後もてっちゃんはいろいろな場所に連れていってくれた。
朝からあちこち見てまわったけど、どの場所も珍しいことだらけで好奇心をかきたてられ、普段ならこんなに動き回ることなんてないからきっと疲れてるはずなのに、僕は少しも休みたいとは思わなかった。
てっちゃんは、僕に串かつやきつねうどん、たこやきというものも食べさせてくれた。
それらはどれもとてもおいしくて、なのに、価格的には安いものだと教えてもらった。
経済的にもここは東京よりもずっと生活しやすいのだそうだ。

何かと比較されることの多い東京とはいったいどういうところなのだろう?
こことは、目に映る風景もずいぶんと違っているのだろうか。



「今日はだいぶん歩いたなぁ…疲れたやろ。
お腹も膨れたし、そろそろ帰ろか。
あ…もうお月さん出かかってるわ。」

空を見上げたてっちゃんが、静かな声でそう呟いた。
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