このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

愛すべき隣人

「ところで、江藤君…
もしかして、自分……人と接する職業は苦手か?」

「え……わかりますか?」

「じゃ、ずっと人と接しんですむ仕事しとったんか?」

「は、はい。そうなんです。」

「そうか……ほんだら、今度は接客業やってみ。」

「えっ!?」



僕が人と接することが苦手だと知って、接客業をすすめるのは、どういうことだろう…?
これも何かの冗談なんだろうか?
僕は意味がわからず、ただ曖昧に笑っていた。



「なぁ、江藤君…
苦手やて思てても意外とそうやないことって、けっこうあると思わへんか?
ほら…言うてみたら食わず嫌いと同じようなもんや。
見た目とかイメージで食べたことなかったもんが、いざ食べてみたら意外といける味やったってことあるやんか。
そういう時って、こんなうまいもん、今まで食べへんで損した~…って気になれへんか?
それと似たようなもんや。
うまいこといけへんかったり、やっぱり無理やと思たらやめたらええだけ。
人生は長いようでも短いで。
その中で出来る事なんて、ほんま少ない。
いろんなことやってみな、もったいないと思わへん?」

「そ、その通りです!
たかだか三百年やそこらしかない人生の中で、体験出来ること、認識出来ることは本当にわずかです!
僕はもっともっといろんなことを研…じゃない…知りたいし、体験したいんです!」

てっちゃんの言葉は、真意は少し違うかもしれないけど、僕が常日頃思っていることと同じだったことが妙に嬉しかった。



「江藤君……どないしたんや、急に熱なって…
しかし、三百年て……」

てっちゃんは何が面白かったのか、くすりと笑った。



「でも、良かった。
この分やったらいけそうやん。
また、お母さんらに仕送り出来るようにがんばろな!」

「はいっ!」

母さんに仕送りの必要は全くなかったけど、僕はなぜだか頷いてしまってた。
16/21ページ
スキ