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愛すべき隣人





「江藤君、出来たで~!」

次の日の朝早く、キミ子ちゃんが直したズボンを持って来てくれた。
いつもなら夜は研究に没頭していて、明け方近くまで起きているのに、昨夜の僕は銭湯から戻るとすぐに眠ってしまってた。
見ず知らずの異世界でこんなに熟睡出来る程、僕は神経が図太かったのかと自分でも驚いた。
でも、考えてみればここで体験した事は初めてのことばかりだったし、普段の入浴法とは違いお湯の中にゆったりと浸かったせいもあって心身共に疲れてしまったのかもしれない。



「キミ子ちゃん、どうもありがとうございました。
……わっ!」

「可愛いやろ?
ただ縫うだけではおもろないからな。」

「おばちゃん、ほんまにハート好きやなぁ~」

破れたお尻の部分には左右対象の形の桃色の布が貼り付けられていた。
てっちゃんはそれを見てにやにや笑う。



「それと、な。
これ、うちのお古なんやけど、これもあげるわ。
お尻のピンクとよう合うで。」

そう言ってキミ子ちゃんが差し出したのは、昨日、彼女が着ていた動物の顔がついたものとほぼ同じデザインの服だった。
これを着るのかと考えると気持ちが沈んだが、この世界の流行りなら仕方がない。



「キミ子ちゃん、ありがとう。」

「早速、着替えてみ。」

キミ子ちゃんに促され、僕は早速その服に着替えた。



「いやっ!江藤君、よう似合うわ!」

僕を見て手を叩くキミ子ちゃんの隣で、てっちゃんは俯いて肩を揺らしていた。
てっちゃんの家には大きな鏡がないからよくわからないけど、こんなものが似合うとはとてもじゃないが思えない。
だけど、キミ子ちゃんのはしゃぎようを見ていると、不思議とそんなことはどうでも良いような気分になれた。
むしろ、なんだか面白い。
気持ちが高揚し、無性にわくわくする。
こんな気持ちを感じたのは、研究以外では初めてのことかもしれない。
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