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愛すべき隣人





「素早いやろ~…」

「確かに…」



キミ子ちゃんは、お好み焼きと追加で焼いたやきそばなるものを食べたら、さっさと帰ってしまった。
でも、てっちゃんが修繕を頼んでくれた僕のズボンは忘れずに。



「あの……てっちゃん、隣の人っていっても、普通、こんなに自由に行き来しあうもんなの?」

僕は、キミ子ちゃんの出現によって浮かんだ疑問を彼に素直にぶつけた。



「まぁ、確かに最近は物騒な事件もあるにはあるけど、このあたりではみんな顔見知りやし、ええ人ばっかりやからな。
どこもこんな感じやで。」

なんと危機管理意識の低い事か。
……でも、それは、もしかしたらこの世界がそれだけ平和だってことなのかもしれない。
僕らの世界では日々凶悪な犯罪が頻発している。
隣人といえども、こんな風に勝手に他人の家を行き来出来る筈もない。



(僕らの世界も大昔はこんな風だったのかなぁ…)

僕はふとそんなことを考えた。



「なぁ、江藤君、明日は大阪を観光せーへんか?」

「観光?
で…でも、僕……」

「お金のことなら心配せんでええ。
江藤君が元気になってくれるなら、そのくらい安いもんや!
……とはゆーても、そんな豪勢なツアーは出来へんけどな。」

「あ…ありがとう。」



その晩は、銭湯という所にも連れて行ってもらった。
見知らぬ人達が同じ湯船に全裸で入るという行為は、僕にはかなりハードなことだったけど、やってみるとそれはとても気持ちの良いことで…
てっちゃんは、そこでも周りの人達と気さくに言葉を交わし、僕を「友達」だと紹介してくれた。
てっちゃんがそう言ってくれたお陰で、僕はそのうちの一人から、風呂上りに冷たい飲料水をご馳走してもらった。
この世界の人々は皆が明るく気さくで…僕は、驚かされることも多い反面、この世界の温かな雰囲気にいつしか居心地の良さを感じていた。
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