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特別な妹





「……どうかしたのか、ジョッシュ。
私の顔に何かついてるのかい?」

父さんは僕に怪訝な顔を向け、自分の頬を手の平で探った。



「な…なんでもないよ。」

ライアンさんに聞いた話が衝撃的過ぎて、僕は自分でも気付かないうちに父さんの顔をじっとみつめていたようだ。
アンリのことでも相当驚かされたっていうのに、まだその驚きから覚めきらないうちにまたこんなことになってしまうなんて…
父さんには僕の知らない顔が一体いくつあるんだろう…?
父さんは僕が剣の道に進むことを本当は快く思ってないじゃないだろうか?
でも、僕にはそんなことは決して言わない。
父さんは、何でも僕のやりたいようにさせてくれる…自分の気持ちは押さえ、僕の気持ちを最優先してくれる…



(そうだ…父さんはとても優しい人だから、だから、アンリのお母さんともなにかそういういきさつがあったんじゃないだろうか?)



ふと見ると、アンリはいつもと同じように上品に料理を口に運んでいた。
あれからもアンリにはまるで変わった様子はない。
初めてうちに来た時と同じく、僕や両親に対して丁寧だけどよそよそしい態度を取り続けている。
考えてみれば、父さんはともかく、アンリは僕や母さんとは初対面だし、自分の立場上、この家にいるのも辛いことなのかもしれない。
そうでなくても、お母さんを亡くしたばかりでさぞ寂しく心細いことだろう。
だけど、そんな様子も見せないのはきっと一人でじっと耐えてるからなんだ。
僕は、今まで考えてもみなかったそんな事にようやく気が付いた。
そして、これからはアンリのことをもっと気遣ってやろうと、僕は兄としての自覚のようなものに目覚めた。
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