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特別な妹

「ジョッシュ、今日はどうもありがとう。
とても楽しかった。」

「え……?!
あ……あぁ…えっと……」

アンリの思い掛けない言葉に、僕は面食らい、返す言葉を失った。
僕は、アンリを森に連れて来たことを少し後悔してたのに、そんなことを言われるなんて…



「アンリ…
僕の方こそ、ありがとう…」

「え…?」



アンリが驚くのも当然だ。
でも、僕は今の言葉が嬉しくて、ついそんなことを口走ってしまったんだ。



「また、近いうちに行こうね。
あ、もちろん、アンリの体調の良い日にね。」

「そ…そのことなんだけど……」

「あ、良いんだ!何も言わないで!」



いつの間にか空は薄暗くなりかけていた。
まずい…父さんが帰って来てしまう。
でも、身体の弱いアンリを走らせるわけにはいかないし、ここまで来たら走った所でそう時間は変わらない。
もしバレてたらなんとか誤魔化さなきゃ。
……そうだ。物置きの中で遊んでたとでも言おう。



頭の中でそんなことを考えている時、数頭の馬が僕達の方へ向かって走って来た。
このあたりでは馬に乗る人はあまりいないから、僕はなんとなくそれを珍しげにみつめていたのだけど、アンリの表情は酷く強張ったものに変わっていた。



「おやまぁ…なんというお姿を…」



馬に乗った人物のうちの一人が僕達の傍で停まり、唇を歪ませてそう言った。
僕にはその言葉の意味がまるでわからなかったけど、なにやら激しい敵意のようなものはいやというほど感じられた。



「ジョッシュ、逃げるんだ!」

「に…逃げるって、アンリ…」

アンリは僕をかばうようにして、僕の前に身を乗り出し、突然そんなことを言った。



「アンリ…か…」

先程の男が馬を降り、それに続くように他の男達もその場に降り立った。
今まで感じたこともないようないやな気配…
そうだ、きっとこれが殺気というやつだ。



「ジョッシュ!早く!」

「馬鹿!おまえを置いて逃げられるか!」



僕のその言葉に男達はくすくすと笑った。
人を小馬鹿にしたようないやな笑いだ。
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