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特別な妹





「もう一度です!」

アンリは手に持ったジョーカーに身体を震わせながら、僕達をゆっくりと見回した。

まさかとは思ったけど、アンリはトランプのゲームを全く知らなかった。
特に難しいルールでもないから、僕が教えるとアンリはすぐにそれを覚え、僕が教えたトランプのゲームに熱中した。
特に、父さんや母さんも混じって四人でやったババ抜きには、異常な程関心を示した。
なぜだかジョーカーはいつもアンリの所に残ってしまい、彼女はそれが悔しくてたまらないようだった。
今まで感情らしい感情を現さなかったアンリが、ようやく人間らしい面を見せてくれた気がして僕はそのことが嬉しくて…
だけど、こう何度もじゃさすがに飽きて来たし、眠い。
時計を見れば、いつの間にかどっぷりと夜も更けていた。



「じゃあ、これで最後だよ。
もう遅いから、アンリが勝っても負けてもこれでおしまい。
また、明日やろうな。」

父さんの言葉にアンリは黙って頷いた。



「やった!」


今度はアンリが一番にあがった。
その時のアンリの顔には、今まで見たことのない子供らしい無邪気な笑顔が宿ってて、それを見たら僕は眠気もどこかへふき飛んでしまった。
父さんや母さんも僕と同じように感じたのか、とても嬉しそうな顔をしていて…
きっと、父さん達もアンリのことが気になってたんだと思う。



(喜んでもらえて良かった…)



僕はその晩、幸せな気分で眠りに就くことが出来た。
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