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特別な妹





「アンリ…何読んでるの?」

次の日から僕はアンリに積極的に話しかけるようにした。
まだ十二歳とはいえアンリは大人っぽく、飛びきりの美人だ。
それでなくても僕は剣の稽古ばかりして女の子とはあまり話した事もなかったから、変に緊張する。



「お母様に貸していただいた詩集です。」

「そ…そう…
アンリは詩が好きなの?」

「特別好きだというわけではありませんが、嫌いでもありません。」

「そ…そう…」



アンリは僕が訊ねた事にはちゃんと答えるものの、その答えはあまりに素っ気無い。
だから、僕も「そう」としか言えず、そこで会話は途切れてしまう。
アンリは身体が弱いから外には連れ出さないように言われていたからせいぜい家の中で話すくらいしか出来ないのだけど、女の子とはどんな話をしたら良いのか僕には見当もつかなかった。



「アンリ…良かったらトランプでもしない?」

話がそううまくもない僕は、ふと、話すよりも身体に堪えない遊びをしたらどうかと思い着いた。
こんな時に手軽に出来る遊びといえば、やはりトランプだ。



「トランプ?カードのことですね。
ポーカーですか?」

「いや、そうじゃなくてメランコリーとか七並べとかババ抜きとか…」

「……それはどういったゲームなのですか?」

アンリはとても可愛らしい角度で小首を傾げた。
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