書類配りⅢ
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「梨央なんだな…?」
「はい」
「神崎螢君の正体は仁科梨央ちゃんで間違いない?」
「はい」
「…そうか」
しばしの沈黙が流れる。
顔を上げられず、螢は二人の言葉を待つ。雅も心配そうに様子を窺っているが、決して口は挟まなかった。
「(あぁ、苦手だ…)」
都合が良すぎると思っただろうか
偽善者だと言われるだろうか
本当に私は…私の“救い”は…
自己犠牲に過ぎないのだろうか───……
「顔を上げてくれ」
浮竹の声にそろっと顔を上げる。
「いつ出て来たんだ?」
「護廷に入隊する数ヶ月前です」
「そんなに早く出て来れたならどうして俺達に会いに来なかった」
「それは…」
「まさか会いたくなかったのか?」
「違います!そうじゃないんです!会いたくなかったわけじゃなくて…」
怒っている
いつもは優しい隊長が
今は声を低くして怒っている
「(当たり前か…)」
周りの気持ちも考えず
勝手に決めたんだ
自業自得と言われても仕方ない
だからいっそのこと
突き放してくれた方が
楽かも知れないな…
「許してもらえないと思いました…」
「それが理由か?」
「はい…」
浮竹が溜息交じりの息を吐く。
「俺達が許さないとでも思ってるのか」
「…許せますか。身勝手な私を。お二人は…許せますか?」
最後の方の語尾を強く強調して言えば、浮竹は眉を顰めたまま、螢をじっと見ている。
「周りにも迷惑を掛けた私がどんな顔でお二人に会えばいいか分からなかったんです…」
「…京楽。お前は梨央のことを怒ってるか?」
「怒ってるねぇ」
「!」
「お前は梨央を許せないか?」
鋭い質問を投げかける浮竹に息を呑む。行き場のない視線を彷徨わせ、京楽の答えを待った。
「いいや」
「!」
「確かに君がボクらに会いに来なかったことについては怒ってる。だってそんな理由でボクらが君を許さないとでも思ったの?」
京楽の言葉に何も返せず黙り込む。
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