書類配りⅢ
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「百年前…ある事件を引き起こした首謀者として有罪判決を受けた子がいたんだ」
「第零監獄は知っているか?」
「はい…。『異常者』を収監する為に造られた脱獄不可能の監獄ですよね?」
「あぁ…彼女は其処に居る」
「…そうなんですか」
「でもね、本当は無実なんだ」
「!」
「あの事件に加担していない筈なのに…どうしてあの子は自ら罪を認めてしまったんだろうね…」
「……………」
「百年という永い時間を監獄で過ごす事になるって言うのに…さ」
「総隊長に理由を聞いても話してくれないんだ。会いに行こうとしても面会謝絶でな…」
「本当の理由を僕らは知らないから…あの子がどんな思いで罪を認めたのか知りたい」
「流祇流達に聞いても分からないって言うし」
「(みんなは私が捕まった本当の理由を誰にも話してないのか…)」
チラリと横目で雅を見る。それに気付いた雅は申し訳なさそうに苦笑した。
「けど何か理由があるんだと思う」
「!」
「あの子は理由も無く、自分から罪を認める奴じゃないからな。きっと…何か守らなきゃいけない理由があったんだろう」
「……………」
「ただ…心配なんだ。あいつは…強そうに見えて寂しがりだから…泣いていないか、心配で仕方ないんだよ」
「浮竹隊長…」
「心配しなさんな浮竹。あの子は必ずボク達に会いに来る。そうしたら笑って“おかえり”って言ってあげよう」
「そうだな」
“おかえりって言ってあげよう”
「…………っ」
膝の上でぐっと拳を握り、口をキュッと結んで顔を俯かせる。
「神崎君」
「!」
「二人に大事な話があるんでしょう?」
“きっかけは作ったよ”“ここからは君が頑張る番”。そう言っているかのように雅は穏やかに微笑む。
「大事な話?」
「なんだい?」
「(せっかく雅が作ってくれたきっかけだ。無駄にはできない…)」
緊張で強張っていた螢の顔が、覚悟を決めた事で一変する。
「お二人に話があります。聞いてくださいますか?」
真剣な表情に二人は頷いた。
「もちろんだ」
「部下の話を聞くのは当然だからね」
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