書類配りⅢ
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「お前アレだな。もしかしてとは思ってたが…ナルシスト入ってるだろ?」
「ナルシスト?何言ってるんですか。ナルシストって言うのは鏡に映る自分にうっとりしたり、自分の容姿を自慢しまくる人のことを言うんですよ。私、全然そういうの無いですから」
「(自分のこと可愛いって言った時点でナルシスト決定だと思うがな。)」
手を振って笑顔で否定する螢に更木は心の中で本音を呟いた。
「しかし…あの女の罠に嵌るなんて思いませんでしたよ。まるで地獄に突き落とされた気分です」
その言葉と反して螢は少しだけ楽しそうに笑う。
「地獄に突き落とされた割には随分と楽しそうじゃねえか」
「わはは。楽しくて気が狂いそうです」
「マジでぶっ飛んでやがんな。ま、それがテメェらしくて俺はいいと思うけどよ」
「(褒めてはいないだろうな。)」
「けど…本当に地獄に落ちた時はテメェの墓の前で大いに嘲笑ってやるよ。“あんな勝気な態度の割にすんなり死にやがったな”ってな」
「そう簡単にくたばりませんよ」
「だったら馬鹿みてぇに笑って前向きに生き抜いてみせろ。それもテメェの取り柄の一つだろうが」
更木はニヤリと笑み、竹刀を肩に乗せた。
「つーかその姿で『私』とか言うなよ。カマ野郎だと勘違いされんぞ。ま、ここはテメェの事知ってる奴がほとんどだからな。関係ねえとは思うが」
更木は判を押した書類を螢に軽く押し付ける。
「いつもの自信に満ち溢れたテメェじゃねえと調子狂うんだよ。だから早く元の姿に戻りやがれ。んで俺との約束果たせ。じゃあな」
用事を済ませると更木は立ち去った。
「もちろん。あなたとの約束は守りますよ。命を掛けた真剣勝負、受けないわけないじゃないですか」
「楽しみだね!」
「ええ。彼との勝負は一筋縄ではいかないでしょう。だから尚楽しみなんですよ。あぁ…早く刃を交えたい」
恍惚な表情を浮かべ、うっとりする。
「その為にはまず問題を解決しなきゃだね!」
「はい。あんな女に負けるつもりはありません」
「頑張れけーくん!」
「ありがとうございます」
応援してくれるやちるに後押しされ、勝気な笑みを浮かべた螢は十二番隊へと向かった。
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