悪夢のはじまり
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朝食を済ませた後、“午後も頑張ろー!”と拳を高々に突き上げる霙を先頭に、蒼生以外のみんなはそれぞれの隊舎に帰って行った。
「キミはいつまでここにいるの。早く戻らないと更木隊長に叱られるよ」
布巾でテーブルを拭きながら言う梨央は首だけをソファーに向ける。
「ねぇ蒼生くん」
そう呼ぶも本を読んでいる蒼生からの返事はない。集中しているのか、梨央の声が聞こえていないようだ。
「今日も午後から稽古なんでしょ。十一番隊は遅刻厳禁だよ。分かってるの?」
咎めるような言い方にも蒼生は本から目を離さず、こちらの返事にも反応がない。
「ねぇってば」
するとイラッとした梨央はテーブルから離れると、ソファーに歩み寄り、蒼生の読んでいる本を取り上げた。
「聞いてるの!」
「オイせっかく読んでんのに何しやがる」
「そう言ってさっきから全然ページ開いてないじゃん!分かりやすい無視はやめて!」
ぷんすこと怒る梨央に、蒼生はグッと眉間を寄せ、不機嫌な顔をする。
「…どういうつもりだ」
「何が」
「誤魔化すなよ」
「そんなに怒らないでよぉ」
へらりとおどけて見せるも、蒼生は怖い顔を浮かべたまま、じっと梨央を見ている。
「ハァ…キミも納得してなかったのか」
「むしろ納得したと思われてたのがビックリだわ」
「頑張るから大丈夫」
「そういう問題じゃねぇよ」
「(これは本気で機嫌が悪い…)」
「自ら進んで危険な道に行こうとするな。お前の判断がいつも正しいとは限らない。ちゃんと周りの奴の気持ちも考えろ。俺達がどんな思いでこの百年、お前の帰りを待ってたと思ってる」
「…私の身勝手な判断でキミ達に迷惑をかけたことは本当に悪いと思ってる」
「誰も迷惑だなんて言ってねぇだろうが」
「だってお兄ちゃん、怒るんだもん…」
「お兄ちゃん言うな。俺が怒ってるのは、お前の“もう一つの悪い癖”だ」
「!」
「何で自分の命を犠牲にする選択しか選べねーんだよ、この馬鹿妹。」
「ば、馬鹿って…!」
「そういうの、ほんと心臓に悪ィんだよ…」
「蒼生くん…」
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