悪夢のはじまり
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「な、何言ってるの!?」
「冗談にしてはキツすぎるっスね」
「悪いが冗談じゃない」
「本気で言ってるの?」
雅の言葉に小さく頷いた。
「そんなの危険よ!」
「でもこのまま放っておけないでしょ」
「だからあたしが冴島を殺して…!」
「わざわざキミがあの女の為に血を汚す事はない。だから私一人で十分なんだ」
「隊長は良くてもあたしは反対よ!」
ガタッと椅子から立ち上がれば、箸がテーブルから落ちる。雅は静かにそれを拾うと新しい箸を持って来る為に応接室を出た。
「そりゃあ隊長は強いわよ。だってあたし達の自慢ですもの。だからと言って!あの女の罠に自らハマるつもり!?」
「そうだ」
「みんなだって反対するに決まってる!」
怒りが収まらない詩調はみんなを見る。すると四杯目のおかわりをしていた霙が食べるのを止め、冷静に詩調に言う。
「霙は賛成。」
「霙!!」
「本当は反対だよ?梨央ちゃんが傷つく姿なんて見たくないもん。でも霙達の信頼する隊長は強い。だから信じよう?」
「!」
「きっと梨央ちゃんなら大丈夫。だって…誰よりも強い心を持ってる人だもん。あんな女になんか負けないよ」
ニコリと笑う霙の言葉に納得したのか、詩調は何も反論できずに、ギュッと口を結び、席に着いた。
「はい。新しい箸」
「……………」
調理室から予備の箸を持ってきた雅が戻り、新しい箸を温厚な笑みを浮かべて渡す。
「…ありがと」
「どういたしまして」
席に戻った雅は琉生との会話を楽しむ。
「まだ納得できないか」
「…当たり前でしょ」
「私を信じてくれ」
青い瞳を真っ直ぐ詩調に向ける。
「私の強さはキミ達が知ってる。ほとんどの隊士を敵に回したが後悔はしてない。それに…罪を犯した奴にはそれなりの代償を償わせるべきだ」
それでも首を縦に振れない詩調に“仕方ない”と肩を竦め、最後の手段を使う。
「これは“隊長命令”だ」
「!」
「賛成してくれるだろう?」
「“隊長命令”じゃ…従うしかないじゃない」
「ごめんね。ありがとう」
謝る梨央に詩調は首を左右に振った。
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