悪夢のはじまり
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「それにるーたん臭いし」
「香水の臭いがね!?オレが臭いみたいな言い方やめて!?つーか…え?そんなに臭う?」
「たまにねー。ぷんぷん臭う〜」
「(やっばい…。)」
サッと顔を青ざめさせた琉生は恐る恐る梨央の隣にいる詩調をチラリと盗み見る。だが彼女は沈んだ表情でみんなの会話が耳に入っていないのか、無言で焼き魚の身を箸で口に運んでいた。
「(はぁー良かった。詩調チャンの前でその話は禁句っスよ霙チャン…!)」
琉生がジト目で軽く睨むも、当の本人はご飯を食べるのに忙しいらしく、既に完食寸前だった。
「雅、醤油取ってくれ」
「はい」
「ん、サンキュ」
「るーたん霙もケチャップ!」
「どうぞっス」
「ありがと!」
そしてぺろりと完食した霙はまだ食べ足りないのか、二杯目をおかわりした。
「ねぇ隊長、本当に気にしてない?」
「キミは心配性だな」
「心配するわよ。あんな事件が起こったの知らなかったんだから。それに…殴られたんでしょ?」
詩調は痛々しそうに梨央の左頬に出来た青紫色の痣を見た。
「いやァ…殴られたのは初めてだよ」
「笑い事じゃないわ」
「こんな痣、治療で治せる」
その部分に触れると微かな痛みを感じた。
「あの女、どうなった?」
「刺されたって聞いたんスけど」
「とりあえず生きてる」
「あんな女、死ねばよかったのよ」
「凄まじい回復力だねぇ〜」
「冴島桃香。護廷のお姫様っスか」
「どんな人なの?」
雅がみんなに問いかける。
「会ったことないの?」
「僕は十番隊に行く用事もないし、そもそもその人がいたことすら知らなかったよ」
「雅クンの天然ぶりも凄いっスね。結構前からいるんスよ、その子」
「そうなの?全然知らなかった」
「知らなくていいのよあんな奴。覚える価値なし会う価値なしだわ」
「すこぶる機嫌が悪いっスね…」
琉生はコソッと雅に耳打ちをする。
「処置が早くて一命を取り留めたらしい。僅かに急所を外していたから大事には至らなかったんだろう」
「ホント…悪運の強い女。」
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