「いつもアンタ達を見て笑いを堪えるのに必死だったもの。“ああ今日もアタシの命令を素直に聞いて馬鹿みたいに褒美を強請るんだ”ってね！」



「マジで最低だなてめえ！」



「でもアンタ達に好かれても全然嬉しくないわ。ベタベタ擦り寄られて気持ち悪かったもの」



「この最低女！」



「絶対に許さねえ！！」



「別にアンタ達に許してもらわなくても結構よ。というか…約束したわよね？どんなことがあっても絶対にアタシの味方だって。約束はちゃんと守りなさいよ！ほんと使えないわね！」



「誰がてめえの味方なんかするか!!」



「この猫かぶり女が!!」



「オレ達を利用しやがって!!」



「人をバカにするのも大概にしろよ!!」



散々騙された上に裏切られた隊士達は怒りを爆発させた。



そして桃香の味方は



誰もいなくなった─────。



「今までアタシの道具（オモチャ）として働いてくれて感謝するわ。最初からアンタ達なんて眼中にないのよ。少し退屈だったから仕方なく相手してあげただけ。道具（オモチャ）で遊んでた矢先にアンタが現れた。それがまさか…男装した女で、貴族だとは思わなかったけど」



桃香は涼しい顔をしている梨央を見た。



「それでも今回は前回と比べてとても有意義な時間を過ごせたわ」



詩愛を見た桃香はニヤッと笑う。



それに対しての詩愛の顔は無表情だ。



「おっと…逃げられると思ってるのか？」



「逃してくれるのかしら」



「キミは逃げられない。キミが逝く先は零番隊が管理してる監獄だ」



「アタシは捕まらないわ」



「随分自信満々だな」



「だってお兄様がいるもの。だから…そう簡単には捕まってあげないわ」



「なるほどな。キミは不利な状況に陥るとすぐ兄に頼る。そして兄に全てを押し付ける。自分の力で解決しようとせず、便利な道具（あに）がキミのしたことを全部なかったことにしてくれる」



桃香は"そうよ"とでも言いたげに胸を張る。



「───なんてことは絶対に許されないんだよ」



「っ！？」



急に声のトーンが低くなった梨央に桃香は体を跳ねつかせる。



「今頃、私の知り合いが彼の元へ向かっているだろう」



「！！」



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