暴かれた真実と罪の代償
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《欲しいなら盗んじゃえよ。》
『ダメよ…そんなの絶対に…』
《どうして?》
『だってコレはあの子の…』
《一つぐらい盗ってもバレないよ。》
『……………』
絡みつくような囁きに、少女の心は揺れ始める。そんな“悪魔”は更に少女の心の奥底へと潜り込み、物欲心を煽った。
《綺麗な宝石だよなぁ…。》
『そうね…とても輝いていて綺麗だわ』
《君が身に付けた方が数倍綺麗だ。》
『!』
《そのサファイアのネックレス、ガーネットのブローチ、ダイヤモンドの指輪…。》
《ぜぇーんぶ、君が付けるに相応しい。あいつじゃなくて、可愛い君がだ。》
『…本当?アタシの方が似合う?』
《もちろんさ。》
“悪魔”に唆され、その気になった少女は宝石を手にしたまま、ニヤリと笑う。
『でも盗むのは流石に…お兄様に叱られるわ』
《なら借りればいい。物を借りる事は悪い事じゃない。満足したら返せばいいんだ。》
『……………』
《悔しくないのか?》
『!』
《両親が死に、唯一肉親の兄が君の為に生活費を稼ぐも、あいつのような裕福で幸せに満ちた生活は手に入れることは出来ない。》
《好きな物を好きと言えず、兄に迷惑をかけるからと自分の心を押し殺してまで我慢する。そんな生活…虚しいとは思わないか?》
『それは…』
《我慢は身体に毒だ。自分の心に嘘を付くと君の為にならない。もう我慢しなくていいんだ。君はあいつより…高価な物を身に付ける価値がある。》
『そうかしら…。……そうよね!だってあの子よりアタシの方が超絶可愛いもの。この宝石を身に付けるに相応しい価値がアタシにはあるわ!』
《そうそう。君にはその価値がある。だから借りちゃえよ。満足したら持ち主に返せばいいんだから。》
少女の瞳に強い物欲心が色づいて見える。
《君は本当に…単純だなぁ。》
嘲笑うように小さく囁かれた言葉など、最早少女の耳には届いていない。
《ちょっと囁いただけで簡単に堕ちる。……お前みたいな女に宝石程の価値も無いって言うのに。あーあ、憐れで可哀想な女。》
クスリと“悪魔”は嘲笑した。
そして少女は
彼女の部屋から
宝石を盗んだ───。
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