仕組まれた罠
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「螢君に早く知らせなきゃって思ったから桃香ずぅーっと探してたんだよぉ」
「知らせる?」
疑問の色を表情に出すと、桃香はにんまりと微笑み、声を弾ませて言った。
「今日は桃香のお誕生日でっす!」
「……………」
仕事に関しての話だと勝手に勘違いしていた螢は『桃香の誕生日』だと知り、呆気に取られた。
「誕生日…?」
「うん❤︎」
「(は?)」
誕生日だから…何だ?
わざわざ探して報告する事なのか?
というかキミの誕生日なんか興味ないよ
「今夜、桃香の誕生日パーティーを十番隊舎で開くの。もちろん… 螢君も来てくれるよね?」
「(絶対に行かない。)」
「あ、服装は死覇装で大丈夫だよぉ〜」
「(聞いてないし。仕方ない…ここは丁重に断ろう。)」
申し訳なさそうに見えるように困り顔を浮かべる。
「せっかくのお誘いなのですが…」
「ダンスも用意してくれるの!桃香のエスコートは螢君にお願いしよっと❤︎」
「いや…用事が…」
「それって桃香のお誕生日より大事なの…?」
「どうしても外せない用でして…」
「でももう螢君の名前書いちゃったぁ❤︎」
「(は?)」
「参加の欄に○しちゃったの♪だって螢君なら絶対に桃香のお誕生日参加してくれるって思ったから!」
「……………」
「桃香目一杯オシャレするから楽しみにしててね❤︎あ、いくら桃香が可愛いからってドレス姿を見て惚れちゃダメだよっ♪」
勝手に喋るだけ喋り、満足した桃香はスッキリした表情で笑う。
「じゃあ今夜待ってるねっ♪」
こちらの都合など御構いなしに話を強引に終わらせて桃香は去って行った。
「……………」
しんと静まり返る周囲。人は誰もおらず、音すらしない中で、顔を俯かせ黙ったままの螢は開いた掌をゆっくりと丸め、皮膚に爪を立てた。
「(ふざけんな。)」
ギリッと血が滲む程の強い力で拳を握り、怒りに堪えるも、抑えきれない圧が螢の体から溢れ出ていた。
「ハァ…仕方ない」
気持ちを落ち着かせるように息を吐き、一番隊舎に戻った。
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