太陽の木漏れ日
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「(動いて。動いて。動いて…!)」
それでも身体は動かない。
「(お願いだから…動いてよ…っ)」
霙は悔しそうに唇を噛む。
「(どうして…動いてくれないの…?)」
ポロポロと涙の粒がいくつも流れ落ちる。
「(霙がいなくなったら…また悲しむ人がいるんだよ?)」
悲しんで悲しんで
泣き声を上げて
大切な人を失って
そして…壊れちゃう
「(そんなの、見たくないの…っ!)」
それはもう、随分遠い昔の記憶。
霙がまだ“───”だった頃。
彼女にはこの世で一番大切なものがあった
あたたかくて
やさしくて
幸せなモノだった
でも“それ”が一瞬にして消え去ってしまった
霙のせいで…───。
「(自分で大切にしてたモノ、壊しちゃった…)」
彼女の記憶に鮮明に残っているのは
大切な人の悲しい顔と泣き声だった
霙はその人を近くで見ていた
ただ、見ていることしかできなかった
何度、声をかけただろう
何度、涙を流しただろう
何十回
何百回
……想いを伝えただろう。
だが、その想いが
大切な人の心に届くことはなかった
彼女は必死に涙を流しながら
大切な人に想いを届けようとした
それでも…叶わなかった
「(届かなくて…消えちゃった。)」
彼女は激しく後悔しただろう
自分のせいで大切な人が悲しんでいる
自分のせいで…全て壊れてしまった
だから…せめて伝えたかった
届かないけど…伝えたかった
そこにいるのに声は届かない
そこにいるのに見てくれない
それでも…伝えるべきだった
だが彼女は諦めてしまった
想いを伝えることを…。
届かないと知って
声を紡ぐことをやめてしまった
彼女はただ、止めたかった
大切な人の涙を。
張り裂けるような悲しい声を。
抱きしめて、救いたかった
大切な人の押し潰されそうな心を。
自分のせいで全てが変わってしまった
幸せな日々を…
彼女は…守りたかった。
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