大切だから許せない
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「けーくんミミズ見つけたよー!」
「そんな気色悪いモノ早く捨てて下さい!
しかも素手で触っちゃダメです!」
「ワラジ虫もいたー!」
「やちる先輩聞いてます!?」
「けーくんも触る?」
「ひっ!?」
ワラジ虫を差し出され、思わず素の声が出てしまう。
「まだいるかなー?」
「(昆虫探しじゃないんだけどな…)」
やちるを誘って花壇に花を植えようと思ったのだが、肝心の彼女は花を植える以前に、土を掘っていた途中で顔を覗かせた虫に釘付けだった。
「さて…植えましょうか」
「どんな花植えるのー?」
「知人から頂いた花の種です」
というもの、まだ零番隊が解散する前、現世のファッションショーを観に出かけた詩調が土産として花の種を買って来てくれたのだ。
「(あれから百年近く経つのに…。ごめん詩調。ちゃんと今から使わせてもらう。)」
心の中で謝罪して花の種が入っている袋を取り出す。
「見たことない花だね〜」
「現世の花らしいですよ」
「これは『チューリップ』で、こっちが『パンジー』って書いてある!」
「どれも素敵な花ですね」
「けーくんこれはー?」
やちるが指差すのは現世に存在しない珍しい品種の花だ。
「あぁこれは僕の故郷の花なんです。育てるのがとても難しくて枯らしてしまう方が多いんですが…僕も育ててみたくて」
「何て言う花なのー?」
「『幸福花』」
「幸福花…?」
「(そして母が好きだった花だ…)」
「白くて可愛いね!」
「その名の通り幸せの花です。結婚式で花嫁さんに贈る花として育てる方もいるみたいですよ」
「そうなんだ!」
「さ、ちゃちゃっと植えましょう」
「どれから植えるー?」
「その前に軍手を」
「このままでも平気だよ?」
「女の子が手を汚すのはいけません。
僕が更木隊長に叱られます」
「はーい」
そうして二人は花の種を植え終わる。
「出来た!」
「手伝って頂いて有難うございます」
「咲くの楽しみだね!」
「はい」
愛らしく笑むやちるの手を引いて十番隊舎に送り届けた後、また同じ場所に戻って来た。
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