遠き日の思い出
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「うぷっ…もう食べられない」
「あれだけ食べればね」
「でも美味しかった!」
全てのデザートを完食した二人は満足そうに甘味処を後にする。
「お。見てごらん、霙。あっちに小さなお店があるよ。行ってみようか」
霙と共に近寄れば、可愛めの小物から綺麗な宝石類まで売られていた。
「わぁ〜!」
「造花まで売ってるのか」
「こっちには食器もあるよ〜」
「まるで『何でも屋』だな」
「色々あって目移りしちゃう」
「リキュールに何か買って帰ったら?」
「リキュールに?」
「うん」
「そうだね!」
霙は並べられた商品を品定めしていく中で、特殊な金具で包み込むように創られた翡翠石の耳飾りを見つける。
「これにする!」
「霙の瞳と同じ色だね」
「喜んでくれるといいな」
「キミがあげる物なら喜ぶさ」
「うん!」
「待ってるから買っておいで」
「ハーイ!」
耳飾りを持って嬉しそうに会計に走る霙を微笑ましそうに見送る。
「(本当に色々あるな…)」
霙を待つ間、目の前の品物を眺めていると、梨央はそれに目を奪われた。
「綺麗…」
青い薔薇を特殊な液体を使って乾燥させた髪飾りだった。薔薇の中には砕いて加工した緑と白の小さな水晶の粒が散りばめられており、それはまるで薔薇に雨の雫が残っているかのようだ。
「『大切な人への贈り物』か…」
プレートにはそう書かれている。
「!プレートが二枚重ねになってる…?」
後ろにあるプレートをスライドさせるように手にとって、そこに書かれている説明を読む。
「!」
梨央は目を見張って驚いた。
「梨央ちゃーん!」
会計を済ませて来た霙の声にハッとして、手に持っているプレートを慌てて元に戻す。
「買ってきたよ〜」
「じゃあ帰ろうか」
「梨央ちゃんは何も買わないの?」
「うん。見るだけでいいの」
「そっか。じゃ、行こう!」
先に歩き出した霙の後を追おうとする。
「……………」
チラリと薔薇の髪飾りを見つめた後、名残惜しそうにその場を立ち去った…。
next…