遠き日の思い出
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ある日の休日。
「今日も晴れたな」
どこまでも澄み渡る青空を見上げる。
「うん、良い日になりそう」
軽く笑んで待ち合わせ場所に向かうと、既に着いていた霙が空を眺めていた。
「み───」
短く手を挙げ、声を掛けようとして留まる。寂しげな表情で空を見つめる霙の翡翠の瞳が悲しそうに見えた。
「お待たせ」
「!」
歩み寄り優しく声を掛けると、空に向いていた顔がこちらを見る。そして頬を膨らませた。
「5分遅刻だよ、梨央ちゃん」
「ごめんごめん」
全く悪びれていない態度に霙は呆れ顔を浮かべる。そしてぷいっとそっぽを向いた。
「あ、ご機嫌ナナメだ」
「霙はお腹が空きましたー」
「ごめんって」
「梨央ちゃんの遅刻癖は今に始まったことじゃないから別にいいけど」
「…空、眺めてたの?」
「うん。雲をね、見てたの」
霙は再び空に視線を向ける。
それにつられて梨央も空を見上げた。
「昔は三人で見てたんだ」
「!」
「子供の頃、雲は綿飴だって思ってたの」
「確かに綿飴みたいだね」
「梨央ちゃんも思ったことある?」
「うん。子供は好奇心旺盛だからね。私も小さい頃は蒼生くんと一緒に空にある雲が食べたくて母に頼んで困らせたくらいだよ」
「ふふっ!同じだね!」
霙は可笑しそうに笑った。
「今日はどこに行くの?」
「甘味処に行こうか」
「やったー!」
「詩調も誘ったんだけど先約があるみたいで」
「先約?」
「乱菊さんの付き合いみたい」
「そっかー。でもしぃちゃんが霙達以外の人と関わりを持つなんて驚きだよね〜」
「大きな進歩だよ。きっと彼女を変えたのは乱菊さんの優しさだ。あの人は誰に対しても平等に接する。詩調を乱菊さんと出会わせて良かった」
「らんらんは良い人だよ♪」
「昔と比べて笑うことも多くなったしな」
「うん…。でもね、しぃちゃん…」
「ん?」
「誰もいないところで悲しそうな顔してる」
「!」
「この前だって…───」
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