カタウデの少女
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「(…ようやく分かった。何で彼女に『死にたがり』という言葉を使ったのか。)」
詩愛は笑みを浮かべている梨央を見た。
「そう貴女…“そういうタイプ”なのね…」
小さく呟いた言葉は誰にも聞こえない。
「(“自らの命を犠牲にして守ろうとする…)」
詩愛は憐れむような視線を送る。
「今でも死神をやめたこと後悔してますか?」
「もう未練はないわ。例えもう一度、死神の道を歩むことになっても、同じ事を繰り返すわ。あの人が死神で在り続ける限り、あたしも死神としてあの人の背中を追い続ける。だから…これで良かったのよ」
「そうですか」
“未練はない”
そう口にした彼女の顔が
少しだけ悲しそうに見えるのは
きっと気のせいではないだろう
「あの華月さん、一つ宜しいですか?」
「何かしら?」
あの時に感じた違和感の正体をぶつける。詩愛が着ている服の片腕に視線を落とした。
「片腕はどうされたんですか?」
その質問に蒼生達も驚いた顔をしている。詩愛の後ろで様子を窺っていた村長もまた、驚いた表情を浮かべていた。
「…気付いてたのね」
「違和感を感じたので」
静かに笑んだ詩愛は、片袖だけを脱ぐ。
「!」
片腕は、無かった──……
「不躾なことを聞いてすみませんでした」
「謝らないで。それにね、片腕を失っても生活に支障はないの。もう慣れっこよ」
頭を下げて謝罪する梨央に、詩愛は軽く首を振って微笑を浮かべる。
「今日はこれで失礼します。貴重な時間を我々の為に作って頂き有難う御座いました」
「話は全て聞けたかしら?」
「十分です。真実が解って安心しました」
立ち上がった梨央に霙は持っていた隊首羽織を渡す。
「はい!梨央ちゃん!」
「ん。ありがと」
受け取った羽織に袖を通す。
バサッ
「!」
詩愛の目に映ったのは
“零”の文字だった───。
「じゃあ帰ろうか」
「ま、待って…!」
帰ろうとすれば詩愛に呼び止められ、梨央はゆっくりと振り返る。
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