カタウデの少女
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「この村を見た感想はどうじゃ?」
「目を疑いました」
「最初は護廷が管理しておった。そのおかげで今より人並みの生活は送れていた。じゃが…あの子が護廷を辞めてからは村への管理が疎かになって現在の状況が続いておる」
「(冴島桃香に村一つをどうにか出来る権力はない。だとすれば思い当たるのは…)」
四十六室か───。
「温室育ちの貴族様には分からんじゃろう。この荒れ果てた村で皆がどんな思いを背負い、毎日生きておるか。特に…そこの二人には一生理解できぬかもしれんな」
「!」
誰を指したかは分からないが、キツイ言葉を投げた老人に梨央は一瞬驚いたように目を見張った。
「そんな言い方…!」
反論しようとした詩調を梨央が短く手を挙げて制す。
「……………」
そしてふと表情を崩し、笑む。
「この村の子供達は元気ですね」
「詩愛のおかげじゃ。あの子の存在が子供達に希望を与えておる。もちろん儂らにもな」
そう話す老人の声はとても嬉しそうだ。
「貴方もこの村の出身なんですか?」
「…いや。儂は“余所者”じゃ。
この村とは別の所から来た」
「何処なんです?」
「…さぁての。随分と帰っておらん故、生まれ故郷の名も忘れてしもうた」
「そうですか…」
「帰りたいと思わないのー?」
「…儂にその資格は無い。
彼処に帰る事は…永久に許されん」
「それは…何故ですか?」
「…守れんかった。儂は…何も守れなかったんじゃ。……追いかける事も、出来んかった」
空を仰ぐ様に悲しげに話す老人の言葉には“後悔”や“悲哀”や“怒り”のようなものが混じっていた。
「運命は残酷じゃ。簡単に世界を壊す。一度失ったものは…二度と戻らんじゃろうに。儂は…自分だけが可愛かったんじゃ。だから…宝物を捨てこの村に来た」
全員は顔を見合わせる。
「さて…着いだぞ」
そこはひっそりとした一軒家だった。
「わぁ〜!野菜がたくさん成ってる!」
小さな畑に成っている作物はどれも瑞々しさを感じた。
「詩愛がお腹を空かせた子供達の為に育てておるんじゃよ」
老人は玄関に向かうと立て付けの悪い戸を引いた。
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