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【第2章】

一つの大きな街を治める領主の1人息子として僕は生まれた。僕は生まれながらに「勝ち組」なのだと人々は言う。

勝ち組の僕は物心ついた頃から毎日、語学や作法やしきたりなんかの勉強を詰め込まれたスケジュールで暮らしていた。
分刻みで作られたスケジュールは正直億劫な事もあったが、他の世界を知らない僕にとってはそこまでの苦痛ではなかった。

ただ、人からの純粋な賞賛には飢えた時期もあった。
使用人たちは父の手前、手放しで僕を褒め称える。使用人たちの賞賛を素直に受け止められなくなった結果、両親に褒めて貰えないかと試みたのだ。
勉強も、運動も、剣技も、馬術も、何にでも取り組んだ。そして結果が目に見えるように時折、大会なんかで成績を残してみたりもした。
しかし父は「当然だ、いちいち報告しに来るな。煩わしい。」の一点張り。母はそもそも僕に見向きもしなかった。
後々知った事だが、僕の両親は政略結婚であり、母には他に愛人が何人もいたそうだ。父は男子の跡取りが生まれることを条件に母を好きにさせていたという。

様々な本を読み漁った僕は知っている。
本来、家族になることや子供を作ることは愛の延長にあるものだ。
しかし、僕の家は違う。
両親は結婚したくもない相手と結婚し、母は自分の自由のために僕を産み、父は自分の後継者とするためだけに僕を育てていた。
そこには本の中に描かれるような愛などという温かいものは存在しなかった。

使用人たちは「この世にはたくさんの愛の形がありますからね」と引き攣った笑顔で僕を励ましてくれた。
父は「この家に生まれた以上、お前もいつかはそうやって子を成すのだ」と諭した。

いつかは僕も家柄や財産で両親が選んだ見ず知らずの女性を当てがわれ、結婚して、子を成し、その子供を育てる存在になる。

それはあまりにも子供の僕には悲しくて、
残酷な未来のように思えた。
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